ヤマト 2
「とりあえず、なんか飲む?」
そう言っておれは冷蔵庫からビールを取り出して、リョウに渡す。まだ飲めるかは知らないけど、おれはシラフだったから。
「ヤマト飲みな、俺はジュースちょうだい」
そう言われたから、リョウには冷蔵庫に入っていたポカリを渡した。俺はビールを開けた。
「ヤマトってさ、ゲイなの?」
突然そんなことを聞かれるからびっくりして、口をつけたビールを吹き出しそうになった。
「違うけど、なんで」
きっとさっきのキスのせいでリョウはそんなことを聞いたんだろう。
「そっか、じゃあ、俺のことがだいすきなのねー」
腑抜けた話し方で簡単にまとめてくれる。おれは、リョウのそういうシンプルな考え方が好きだから、まあ間違ってはいない。
「なんだよ、それ。すきだけどさー」
そうやってちょっと拗ねたようにして答えたら、リョウはニヤッと笑って受け入れてくれる。それをお互いにわかっていて、こんなふざけた戯れをしてしまう。
そういうことがありながら、おれたちが知り合ってから関係は変わらず、10年経った。
リョウはバンドを辞めて、バーテンダーになった。その後、独立して自分の店を開くことになったと連絡が来た。
「おめでとう」
オープン日、おれは最近仲良くしている女の子を連れて行った。
おれの知らない仲間に囲まれているリョウの姿をひとりで見ていられないと思ったから。けど行かないなんて選択肢はなかった。
「ヤマト、来てくれてありがとね」
そう言ってカウンター越しにみるリョウは生き生きしていた。自分の居場所を見つけたんだ、と思った。
おれはそれが嬉しくもあり、複雑でもあって、ウイスキーをロックで頼んだ。
おわり
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