7、第三期原巨人とその補強について考える

1、「必要なのか」と言われるほどの大補強をした巨人

中々豪華なものだ。読売ジャイアンツが高橋由伸監督に契約解除を申し付けた後、原辰徳氏に監督を再依頼、また強い巨人が戻りそうな背景にさいして、FA戦線で大補強。こと注目された広島・丸佳浩外野手をはじめ、西武で活躍していた炭谷銀二郎捕手、オリックスの自由契約からとった中島宏之内野手、と豪華絢爛、どころか昨季までシアトルマリナーズで投げていた岩隈久志投手を獲得など、その補強はとてつもないものになっている。

一方で生え抜きかつ主力選手であった長野久義選手が広島へ、内海哲也投手が西武へ、というように人的補償としてチームを去るなど、巨人のオールドファンからかなりの懸念をされているのも事実といったところか。

オールドファンからしたら「巨人の伝統を守るべきベテランを廃してまでチームを再建すべきなのか」という声も上がっていて、また炭谷選手や中島選手も脂の乗り切った選手、メジャー帰りとはいえ年齢的に能力は未知数な岩隈選手など「それって補強として無理してまで撮る選手?」という疑問が呈しているのも事実ではなかろうか。

しかも内海、長野両選手は第二期原監督政権を支えた立役者のメンバーでもある。それを、あくまで広島、西武に選択権があるとはいえ、人的補償のプロテクトから外してまでやるべきだったのか、という疑問の声がぬぐえなくもない。近年活躍の機会を失いつつある内海投手は00年代前半にあった巨人の悪臭を払拭した選手ではあるし、巨人ファンからしたら長野選手は巨人に入るために何度もドラフト拒否をした、いわゆる逆三顧の礼をした巨人愛に勝る選手。その選手を捨ててまでの補強に異を唱える人も少なくない。丸選手の人的補償だったにしてもだ。

新しい原政権を生むために過去の選手は用済みなのか。それで連れてきた選手はロートル寸前。そんな選手のために枠を減らさなければならないのか。不可解にも見える。

ではこの補強。なんのためにやったのだろうか。

2、数年後を見据えた補強と賞味期限の近いFA選手

この件なのだが、意外と私は好評にしている。というのも原監督は数年を見据えた上でこの補強を為しているからである。

これだけ見てしまうと「どこが数年を見据えたものなのか。FA選手なんて使えてせいぜい数年」という感覚に感じるであろう。確かに戦力として見れば、後数年どころか今年が最後になりかねない選手も少なくない。中島選手などは厳しい評価をしてしまえば、本当に必要な選手なのか。

こういう考えは自然なファン心理で、私とて彼らが数年後、巨人の黄金期を作ってくれる選手であるとは思っていない。丸選手以外はシーズン終盤まで一軍帯同していれば十分だろう。下手したらシーズン終盤に出てきていざというときの保険程度であれば今年の補強としたら十分すぎるだろう。高すぎる二番手捕手、代打。選手としてのシーズンはこれくらいでも充分であると考えている。

となると、彼らは他の役割を演じてもらう必要があるわけである。選手としてではなく、他の存在として。

そういわれると真っ先に思いつくのがコーチ的、先輩的人材としてだろう。数年後のコーチとしてチームに招き入れ、今の段階でコーチと選手の橋渡しだけでなく、先輩選手、他チームで活躍してきたノウハウを伝えるための存在として彼がいる、という感覚を持つのも自然だろう。

これは半分正解である。年齢的にも選手として世界から足を洗う時期に来ているのは否定できない。三年いてくれれば御の字という位で、長生きできるとは到底思えない。もしかしたら金本知憲選手(元広島、阪神)や谷繫元信選手(元横浜、中日)、山本昌選手(元中日)のように奇妙なほど長生きする可能性だって充分にありうる。それは天知る地知る、という奴で今どうこう語れないが、大体はその印象のままであろう。

しかし、コーチ招聘を視野にいれたからその選手らに億近い金額を払っているのだろうか。そこを睨んだ補強であるのなら中島選手の金額(おおよそ5000万)くらいならば分かるものの、炭谷選手など貰いすぎもいいところである。炭谷選手は32歳とまだ老け込むには早いにしたって、流石に将来のコーチのために億を支払うなど金銭感覚がマヒしているように見られても仕方ない。

未だに金銭感覚の狂った巨人軍なのだろうか。

3、迫りくる人材の交代、そこから見える「生え抜き」と「補強選手」の壁

私はそう思わないから評価しているのである。私はどう考えているのか、を先に述べると彼らは今いる選手に対しての「振るい」として呼ばれたのだ、と解釈している。

高橋由伸政権下のFAはどうだったかを考えてほしい。まず山口俊投手、森福允彦投手、野上亮磨投手、陽岱鋼選手といったところか。現状の活躍は云々にしても「活躍」される事を期待されての入団だったし、それはファンも共通の理解だろう。菅野智之投手に次ぐ新しい先発が欲しかったのは間違いないし、長野選手以外にも外野の要は欲しかったからこそ彼らにスポットは当たったのだ。

では生え抜きの選手はどうなったのか、と言われたら、ピンとくる選手がいるだろうか。確かにファンだと山本泰寛選手、重信慎之介選手の台頭は著しいだろう。去年の新人と思えば大城卓三選手(NTT西日本から)、田中俊太選手(日立製作所から)などの社会人野球選手の存在も目立つ。

しかし、ファン以外からしたら出てきた生え抜きで印象的なのはせいぜい岡本和真選手くらいなもので、それ以外はたまに出たりでなかったり、という位にしか見られていないのではないか。生え抜きと言っても「坂本、菅野、岡本たまに阿部」くらいの印象を持つ人も少なくないはずだ。ちょっとしか見ていない私でさえ「誰よ彼」という選手が増えつつある。正捕手でさえ未だに小林誠司選手、宇佐美真吾選手、大城卓三選手の三名で「誰が一番スタメンをはるのにいいか」ともめている始末である。

それくらい生え抜きというのは競争しやすい環境にあるのが現状の巨人である。スタメンに長く名を連ねる可能性がありつつも、まだまだ団栗の背比べあ抜け出せていない。巨人ファンでなければ未だにセカンドが第二期原政権の選手の名前が出てきてもおかしくない現状。それが今の巨人である。

そこで彼ら「補強選手」が活きてくるのである。

彼らはその競争しやすく、かつ競争しきれていない現状の「劇薬」であり、いわば彼らは「こんなロートルに土台を奪われているようじゃあ、今後の契約は短い」と選手に通告する係として選ばれているのである。

つまり、丸、炭谷、中島、岩隈、さらに加えていいのでああれば上原。彼らを超えられなければ来年以降の契約は凉しいものになる、という勧告のための選手なのである。

特に炭谷選手に言えば捕手陣には重い通告で、特に小林選手辺りなどには「彼越えられなければ彼が使えなくなっても君は二番手だから」くらいの厳しいものを突き付けたに等しく、また他の選手に関しても「炭谷越えが果たせなくばコンバート、下手したら契約はないと思え」くらいの御触れを出されたに等しい。

補強選手という「壁」を超えられない選手に待っていられる時間は少ない、という強烈な競争意識を叩きつけるために呼ばれたのである。外野手などは陽、丸の二人を超えるなり他の生き方を見つけるなりしなければ大人しく代走起用で、そこでも現在コーチの鈴木尚広選手のように超人的なものがなければ数年後には下野を余儀なくされる、という相当きついものを出されているだろう。

中島選手などはほとんどしていないセカンドやショートなんかに布陣されたらそこを守る選手は冗談抜きでの総入れ替えもありうる。それくらい突き付けられたものは重い。岡本選手だってちょっと不調になったら中村、ビヤヌエバ選手も後ろに構えているからな、という重圧にもなっている。

岩隈、上原選手も抜けないような若手に未来があるわけでもなく、入れ替えも激しい投手陣、早々の配置転換か退場を命じられるだろう。それでもまだ野手陣に突き付けられたものを考えると緩やかな方というのが投手陣である。

そういった明確な「役割」が彼らにあるのだ。彼ら補強選手がいることで新しい次代の選手を「育成」ではなく「這い上がってこさせる」事を頭に入れている原監督の思惑が見えてくる。彼らを踏み台にしてきた選手が今後の巨人を作るのだ、という意志があるのだ。

4、巨人の明日のために~生き残りをかけられた選手たち~

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