もしもは突然やってくるJR福知山線脱線事故の体験ー「人生会議」をご存じですか?
第3回みんなの人生会議 〜ナースと知ろう・もしもは突然やってくるJR福知山線脱線事故の体験から–2021
人生会議とは、2018年から厚生労働省が啓発しているACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称です。
「事故や病気など、万が一の時に備えて、自分が大切にしていることや望み、どのような医療やケアを受けたいかを普段から考え、周りの人と話し合っておきましょう」という取り組みです。
ACPは医療従事者に向けたものではなく、国民ひとり一人に向けたものですが、患者さんの生死に関わる私たち看護師の仕事と関わりの深いテーマです。
ナースライフバランス研究室では、看護師のACPへの理解を促すため、2021年11月30日、「第3回みんなの人生会議 〜ナースと知ろう・もしもは突然やってくるJR福知山線脱線事故の体験から–2021」を開催しました。
特別講座「〜ナースと知ろう・もしもは突然やってくるJR福知山線脱線事故の体験から」
今回のセミナーでは、特別講座「〜ナースと知ろう・もしもは突然やってくるJR福知山線脱線事故の体験から」と題して、JR福知山線脱線事故の当事者である、浅野 千通子講師にご登壇いただきました。浅野さんがJR事故から体とこころの繋がりが大事だと気付き、現在の活動にも繋がっている、事故からの16年間から学ぶ、いのちの講演をしていただきました。
浅野さんが、当事故に見舞われ、退院までの間に気付いたことは、生まれて初めて自身の身体と向き合うようになったとのことでした。事故当初、浅野さんは繊維メーカーで働く26歳。事故に遭遇し、入院後はまな板の上の鯉状態。初めての手術に行くときに手を握ってくれた看護師さんが一番印象に残っているそうです。生まれて初めて、ボロボロになった自分の身体と対面し、動けない自分の身体を感じ、自分の身体ってこんなに大事なものだったと気付きました。その後、徐々にリハビリが進み、自分の足で歩けるようになってからは、ボロボロな身体を動かしていると、「自分の身体は自分で責任を持たないといけない」という意識へと変わり、ピラティスの資格を取得。取得後は自身の身体の治療に当てることはもちろんですが、講師としても活躍し、3年後には、軽やかに歩けるぐらいになりました。
当初、浅野さんは、歩くことができれば、社会復帰できると思っていました。しかし、心が追い付かず、その後8年間うつ病になってしまいます。うつ病になった際には、気分の波が激しい期間があり、精神科の閉鎖病棟にも入ったこともありました。
事故から12年経ったある日、浅野さんを救った出来事がありました。それは、子供の誕生でした。子供がありのままの姿でいる様子をみた時に、私もありのままでいいかもしれないと思ったそうです。
それ以降、体だけの学びだけでなく、感情や意識などの精神面との繋がりを学ぶようになり、自分自身を知って自分をケアしていくことが大事だと気付いたとのことでした。そんな山あり谷ありのご経験から現在では、THE LIFE EDITというもっと自分らしく自由に人生(心・身体・生き方)をクリエイトしていくためのオンラインサロンの運営に携わっています。また、命に携わる職種の方に向けて、安全をテーマにいのちの講演を開催するなど、浅野さんの活動に繋がっているとのことでした。
「もしも」のことはちょっと話し合うだけでは役に立たない
また、その「もしも」の最期の時のことを事前に家族と話していたら、今、変わっていたと思うことはありますか?という質問が浅野講師に投げかけられました。
これに対し、浅野講師は「変わらないと思う」という答えでした。
その理由として、「もしもの時のことをちょこっと話していたとしても役に立たない。それはもしもの場面はその瞬間ではなく、そこからもしもの連続。少し話し合っていたとしても付け焼き刃的なものでは役に立たない。それまで自分がどういうふうに生きてきたかがそのまま出てくる。」と語られました。
ACPや人生会議はただ1つ答えというのが存在するわけではないため、かたちづくるのには時間がかかるためと、ご自身の体験を振り返って答えていただきました。日頃から自分自身や家族など身の回りの人と話しておくことが必要だと思いますと話してくださいました。
もしもを考えるヒント
さらに、質疑応答の場では、ACPをもっと気軽に考えられるツールはないのでしょうか?という意見がありました。世の中にあるツールの1つとして、「もしバナゲーム」が挙げられました。みなさんは見たことがありますか?
このカードは、最期の時に起こりえる状況がカードに記載されており、自分のもしものことについて考えることができるカードゲームになっています。これを読んで下さっている皆さんももしご興味があれば、ゲーム感覚で周りの方と人生会議を考える1つの機会になればと思います。
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