成人看護看護学実習アセスメント例①

M.ゴードン:11の機能的健康パターンで

1.健康知覚/健康管理


(S)普段生活では、「痛い時もあれば痛くない時もあるが、痛くない方が多い。」
リハビリについては、「痛い時もあれば痛くない時もあるが、治療するためだから」という発言あり。
(O)主訴:左寛骨臼骨折からの痛み
現病歴:7月7日に自宅の庭木を剪定していた際に、脚立から塀に足をかけ損ねて、転落し、受傷する。上殿動脈、外陰部動脈から恥骨近傍に出血が見られる。プラビックス錠服用の経緯あり、TEA施行される。その後、プラビックス錠を再開し、骨折部痛は自制内にて、リハビリ目的にて転院となる。
疾患名:左寛骨臼骨折
既往歴:85歳 胆石 82歳 脳梗塞 
    66歳頃 前立腺肥大
感染症:HCV弱陽性
血液データ:入院時
赤血球336万mm3
白血球 8200mm3
ヘモグロビン 10.5g/dl
ヘマトクリット32.2%
血小板 50.5万
Na 139mEq/l
Cl 101mEq/l
K 4.0mEq/l
CRP 1.37mg/dl
AST 14
ALT 18
9月12日
赤血球425万mm3
白血球 5340mm3
ヘモグロビン 13.4g/dl
ヘマトクリット39.1%
血小板 11.1万
Na 138mEq/l
Cl 106mEq/l
K 4.5mEq/l
CRP 0.15mg/dl
AST 81
ALT 96
<内服薬>
プラビックス錠75mg
ノルバスク錠2.5mg
マグミット錠330mg
カロナール錠330
リピドール錠5㎎
ムコスタ錠100
プルゼニド錠12
ハルナールD(a2)
患部は接地可、荷重不可であったが、9月10日のCTにより荷重UP
ベッドの柵を勝手にとり動こうとしていることがあった。
9月22日にベッドの柵を勝手にとり、立ち上がり、荷物の整理をしていた。

1.健康知覚/健康管理のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 自宅の庭木を剪定していたということから入院前のADLは自立していたと考えられる。現在は、荷重を増やしてよいという診断が出ているが、車椅子を使い、完全に患部に荷重をかけられない状態である。ベッドの柵を勝手にとり動こうとしていること、患部の痛みがないこと、リハビリである程度の立位保持・捕まりながらの歩行ができているから、患者自身の疾患について理解が不足している可能性があると考えられる。そこで、事故防止のために疾患の理解をしてもらい、なぜ一人で動いてはいけないか説明する必要がある。
 また、動きたいという意志が強いためリハビリの受け入れは、積極的であり、いきたくないなどの言動は見られないので、リハビリへの意識は高いと考えられる。

プラビックス錠、ノルバスク錠の副作用に肝機能障害がある。Cさんの場合、HCV弱陽性であり、入院時はASTが14、ALTが18であったのに対し、9月12日の検査ではASTが81、ALTが96と上昇していたので、副作用の症状が出現しないか経過を観察する必要がある。


入院時の検査から白血球 8200mm3、CRP 1.37mg/dlであったが、9月12日の検査で白血球 5340mm3、CRP 0.15mg/dlと減少していることから炎症反応が治まり、痛くないときの方が多いという患者の発言から患部の回復は、順調であると考えられる。また、赤血球は、336万mm3から425万mm3に上昇し、ヘモグロビン10.5g/dl、ヘマトクリット32.2%からヘモグロビン 13.4g/dlにヘマトクリット39.1%上昇していることから、貧血は改善し、ふらつきや目まいのリスクが低下し、さらに、患部の痛みが引いてきていることから、立位保持時の転倒のリスクも低下していると考える。しかし、痛みが引き、リハビリによりある程度の立位保持・捕まりながらの歩行ができているから、一人で行動することがみられている。だが、完全に荷重をかけられるほど回復していないので、理解不足からの転倒のリスクは増加すると考えられる。これらのことから、回復傾向にあるが、完全に荷重をかけられるほど回復していないので、CさんのADLを把握し、生活行動について援助か見守りかを判断してADLの拡大するように関わっていくこと、ベッドから降りて行動する場合は援助者を呼ぶことを説明する必要がある。

 内服薬が8種類あり、薬を飲んだことは覚えているが、何の薬を飲んだか理解しているかは不明なので情報収集する必要がある。

既往歴に脳梗塞があり、顕著な麻痺は見られないが、左手の動きが右手と比べ悪く、握り方も弱いように見えるので、観察する必要がある。

2.栄養/代謝

(S)食事は1日3回で、朝7時50分、昼11時50分、夜17時50分
パン、麺類は禁止
摂取量は、5割~10割は
お米はお粥で、おかずは刻み食
「あまり動かないのでお腹が減らない」
推定基礎代謝量(現体重):1151kcal/日
推定基礎代謝量(標準体重BMI22):1102kcal/日
推定基礎代謝量×活動係数:1543kcal/日
              (×1.4)
(O)BMI=23.3
 お茶を飲む際に、一回だけ軽くむせる
入院時 AST 14IU/L ALT 18IU/L
9月12日 AST 81IU/L ALT 96IU/L
9月16日 AST11IU/L ALT8IU/L
ソースの口を開けられない。

2.栄養/代謝のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 BMI=23.3であり、標準体型である。1543kcal/日が必要と推測されて、1日の摂取エネルギーが1600kcalであり、食事量は毎回ほぼ全量摂取であるので栄養不足になるとリスクは低く、間食も見られないので太るリスクも低いとと考えられる。
「あまり動かないのでお腹が減らない」と発言が見られたが、その日の昼食は全量摂取していた。お米はお粥で、おかずは刻み食であるため、食事中にむせたのは、お茶を飲む際に、一回だけ軽くむせただけであった。食事は患者自身で食べていたので、食事のセッティング以外は見守りをする。しかし、指先で細かいことが難しいので、難しそうなこと(封を切るなど)があれば、患者に許可を取り、援助する。
 Cさんの場合、三回の食事ごとに200mlほどお茶を飲んで、配茶されたお茶を約150~200mlほど飲み、主食がお粥であり、1日に約1ℓは水分補給している。汗をほとんどかかない生活をしているが、高齢になるにつれ、脱水のリスクが上がるので、詳しい水分摂取量を把握する必要があり、脱水症状の観察、情報収集する必要がある。
Cさんは、HCV弱陽性であり、入院時はASTが14、ALTが18であったのに対し、9月12日の検査ではASTが81、ALTが96と上昇していた。しかし、9月16日にASTが11、ALTが8に下がっていたので、この状態を維持できれば、肝臓への負担を軽減できる。AST、ALTともに31 IU/L以上は肝細胞が障害を受けている疑いがあり、変動しているので今後も観察する必要がある。

3.排泄

(S)排便 2日に一回のペース
   排尿 10~15回/日

(O)9月17日では、オムツではなく、トイレで排便、排尿を行っていた。

3.排泄のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 マグミット錠を処方されていて、排便は2日に一回のペースであるで、薬の効果で排便はコントロールされていると考えられる。ベッド上にいる時間が多いので、少しでも運動不足の改善のために生活動作の中で、自分でできる動作は安全に自分で行えるように環境を整えるなどの援助を行う。
排尿は、10~15回/日で頻尿傾向だが高齢であり、前立腺肥大の既往があるためハルナールD(a2)を服用しており、尿道内部の圧力を下げ、尿を出しやすくするようにしていることが原因で排尿回数が増加していると考えられる。
 夜間の排泄の回数が増えると睡眠時間が減り、疲労が貯まりやすくなる。疲労が貯まると、転倒のリスクやリハビリのモチベーションが低下する。

4.活動/運動

(S)晴れた空を見て「晴れた日は、散歩にいきたい」「ひまだな」
昔は農家で、若いころは自転車で出かけたりと活発に動いていたとのこと。
(O)リハビリ、食事の時間以外はベッド上にいることが多い。移動する際は車椅子を使用。
食事は、スプーンを使用し、セッティングを援助。
入浴は、シャワーチェアを使用し、下肢の着脱衣、洗うことを援助。
排泄行動は、トイレまで車椅子を使い、トイレに座る、車椅子に戻ることは自力で可能だが見守りが必要。
リハビリでは、座るトイレの動き、片手だけで捕まり歩く練習を行い、できていた。歩いた時の骨の痛みがなく、筋肉(大殿筋、大腿二頭筋)の張りがある。また、歩行時に臀部が左にずれる。

4.活動/運動のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性) 

 X月Y日に受傷し、入院していて、左寛骨臼骨折であり脚を動かせない状態であり、ベッド上の生活が長く、体力、筋力が入院前と低下している可能性があり、足にかけられる負荷の把握も確実にできているとは限らないので、立つ場合(車椅子移乗時、便座に座る時など)、見守りが必要である。
 リハビリの歩行時に臀部が左にずれる歩き方になってしまう(おそらく中殿筋が弱いため)。この歩き方だと大殿筋、大腿二頭筋が伸びっぱなしになり、炎症が起こる可能性があり、Cさんは、筋肉(大殿筋、大腿二頭筋)の張りがあると言っており、悪化しないか観察する必要がある。
ADLは、入浴は介助を行い、移動は車椅子であるが、衣類の着脱衣、車椅子移乗、トイレに座るとき、食事は患者が主体的に行うことができる。筋力低下(主に大腿四頭筋、大腿二頭筋、大殿筋、腸腰筋)の防止やADLの拡大のためにも、必要最低限の援助を行う。晴れた空を見て「晴れた日は、散歩にいきたい」という発言から動きたいという意志があるので、外で散歩するということを目標にし、普段の生活で自立した部分が見られると褒めるなど声がけをして、リハビリのモチベーション向上できるように促し、早期回復、退院につながると考える。

5.睡眠/休憩

(S)昨晩はよく眠れたのかという質問に「普通」と答える

(O)9月16、17日二日続けて14時50分頃、睡眠をとっている
夜、毎日10回近くトイレにいく。

5.睡眠/休憩のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 睡眠の質に関しては、普通と答えるが、午後に定期的に睡眠をとっている。さらに、夜に10回近くトイレに行っているので、熟睡ができていないと考えられる。また、高齢であることから体力、筋力が低下していて、疲れがたまりやすいと考えられる。
 睡眠不足になると、生活リズムが崩れ、疲労が貯まると転倒の可能性が上昇したので、夜の排泄の援助は患者の疲労を考えて、昼の見守りだけだが、車椅子移乗時などに援助を行う。
患者が睡眠のペースに対し、苦痛を感じていない場合、睡眠する時間帯には、なるべく援助を避けるようにする。


6.認知/知覚


(S)高齢であることから聴力が低下している。

(O)眼鏡なし聴力は、大きめに声を出すと聞こえる程度。言葉は聞き取りにくい時がある。認知力は、テレビカードと地下鉄のカードを間違えたりするが、説明を繰り返すと理解できる程度。転院前に長谷川式で認知症(中度)と結果が出た。

6.認知/知覚のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 高齢であり、聴力は、大きめに声を出すと聞こえる程度であるため、患者のコミュニケーションをとる場合、プライバシーに関わることは病室から出て他の患者が聞こえない場所に移動するなどプライバシーに配慮する必要がある。
 認知力は高齢であり、ベッド上の生活では低下するので歩くなど行動することで認知力の低下を防げる。また、今の段階では、詳しく説明を行うと理解できるので、説明をする場合、一回で終わらず、何回かに分けて説明したり、説明の最中に理解度を確認したりする必要がある。
 PTのリハビリの際に、立位保持の練習で平行棒から手を離し、荷重をかけると痛みが出るということなので、病棟での生活で手すりなどを使わず立位を保つ動作は避ける。
 エリクソンの発達課題は、統合性対絶望であり、統合性とは、人生に対する後悔を心に収め、自分の生きてきた道の総まとめと、残りの人生に対して関心を持つことで、絶望とは、現状を認めつつも、取り返せないこと悔やむことである。そこで、Cさんの場合散歩を自分の足でできて自宅での生活ができることが達成されるということが重要であると考えられる。


7.自己知覚/自己概念

(S)「年取ってからの怪我は大変だね」と発言。「若いときならば怪我しても、すぐに治ったんだろうね。」
「リハビリで痛いのはしょうがない。」
PTのリハビリ時、立位保持の練習で平行棒から手を離すと「少し痛い。」
(O)姿勢は若干猫背ぎみ。
表情は豊かで、時折笑顔が見られる。
リハビリやトイレなどの活動を行った後、特に午後に少し疲れている表情が見られる。

7.自己知覚/自己概念のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 「年取ってからの怪我は大変だね」と発言からボディイメージは、怪我をすることによりずれたが、リハビリを受けて、入院前のADLに近づけることで一致できると考えられる。リハビリは、トイレに座り、着替えたり、平行棒に掴まり歩行したり良好な経過をしていて、患者自身でできること、できないことをある程度を把握できていると考える。
 散歩、自転車に乗ることができるようになることを目標にリハビリをしているので、散歩、自転車に乗ることはADLが基本となるため、病棟ではADLの拡大が最大限できるように環境整備、見守りを行う。


8.役割/関係

(S)「妻とは、4歳違いだよ。」
(O)入院前は、妻と娘と一緒に暮らしていた。
キーパーソン:妻、娘
9月18日に家族がお見舞いに来ていた。
その時のことを笑顔で話していた。

8.役割/関係のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 9月18日に家族がお見舞いに来ていたので、その時の様子を笑顔で話してくれたので、関係が良好であると考えられる。妻と娘と一緒に暮らしていたので、退院後生活では協力を得る必要がある。
 要介護認定を受けていて、現在、要介護4であるので、退院後、必要があれば、介護制度を使う必要がある。

9.性/生殖

(S)既婚 男性
(O)既往歴に66歳頃、前立腺肥大

9.性/生殖のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 前立腺肥大の既往があり、前立腺肥大が悪化すると前立腺がん発症の恐れがあるため、前立腺肥大の症状を観察する必要がある。また、患者は定期的に血液検査を行っているのでPSAの値が出ていれば確認する必要がある。

10.コーピング/ストレス耐性


(S)「いつもお粥だと飽きるんだわ。」
「散歩がしたい。」「ひまだ」
(O)リハビリ時にOTと外に出て風にあたりに行っている。

10.コーピング/ストレス耐性のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 昔、農家をやっていて、さらに、活動が活発だったことにより、行動したいという意志があり、ベッド上の生活がストレスになっている可能性がある。リハビリ時にOTと外に出ることで、ある程度ストレス解消を行えていると考える。また、時間に対して几帳面であり、待つことに対してストレスを感じている可能性がある。リハビリ、入浴などの前になると自分でベッド柵を外し、準備するので転倒転落の防止のために患者と時間の約束、準備をしたくなったら誰か呼ぶ(ナースコールを押す)こと約束し、一人で立ったり、歩いたりすることを防止する。

11.価値/信念

(S)昔、自転車で円山の球場まで行って、田中将大が出る高校野球の試合を見たときは感動したという内容の発言があった。
(O)リハビリの目標は散歩と自転車に乗ることを目標としている。

11.価値/信念のアセスメント(感じたこと・考えたこと・援助の必要性)

 自転車と散歩をしたいことが目標であるということから、退院という意思が見られ、リハビリのモチベーションが向上していると考えられる。リハビリを通じて、患者自身でできることが増えているので、患者の能力に合わせた援助を行う。


*看護問題

*患者自身の疾患について理解が不足からの転倒転落による骨折の再発


*夜間の頻繁な排尿による睡眠不足

*睡眠不足の疲れからADLの低下が起こる恐れ

*左寛骨臼骨折からの活動困難によるセルフケア不足

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