日記:新時代

先日『ONE PIECE FILM RED』を観てきました。以下ネタバレ注意です。

自分のONE PIECEへの知識はというと、とりあえず原作は読んでいて、アニメや映画はあまり観ていないというレベル。今回の映画はなんだか話題になっていたような気がしたので、気になって観にいくことにした。

そしたらめちゃめちゃ面白くて、(来場者特典が欲しいというのもあって)結局2回観てしまった。


この映画のキーパーソンであるウタは、ルフィが小さい頃にシャンクスの娘として会っているということになっている。有り体に言えば幼馴染というやつだけれど、しかし作中ではもはや世界に名を轟かせているルフィの幼馴染として登場するからには、生半には肩を並べることができない。言うなら、「世界の歌姫」というだけでは少し物足りない。それだけ、すでに構築された世界観に入り込むのは難しいような気がしていた。しかし結論から言えば、そんな心配は杞憂であった。

映画は、ウタのライブで幕を開ける。2年前に映像電伝虫による配信で音楽活動を開始したウタがはじめて開催するライブということもあり、世界中からファンが集結する。しかし大海賊時代におけるアーティスト活動は、そう簡単ではない。力による略奪が横行する世界にあって、大規模なライブが海賊たちに目をつけられないはずもない。そうしてライブ会場に現れた海賊の乱入に対して、ウタは悪魔の実であるウタウタの実の能力を用い、並みいる猛者を相手に引けを取らない戦闘力を振るう。「私は最強」と高らかに声を張る歌のごとく、力に屈しない強き歌姫の姿を見せつけるのだった。

しかしライブが進むにつれて、ウタの様子が変わっていく。エンドレスで続けると宣言したライブから、ルフィたちが立ち去ろうとすると、それをさせまいと身柄を拘束しはじめる。そして次第にウタの真の能力と目的が明らかになっていく。ウタウタの実の能力とは、自身の歌を聴いた者を精神世界(ウタワールド)に連れて行くこと。ウタは、眠れなくなる代わりにやがて衰弱して死に至るというネズキノコを食べており、配信を通して全世界に歌を届けたのちに自らが死ぬことで、傷つくことのない永久平和の世界へと人々を連れて行こうとした。能力者であるウタが命を落とせば、人はずっとウタワールドに閉じ込められることになる。傷つくことはない。楽しいことばかりの世界。ウタはそれを救いと捉えるが、見方を変えれば世界を巻き込んだ無理心中でもある。しかしウタは覚悟を持って新時代を築き上げようとした。

シャンクスたちに置き去りにされてから、ウタはずっと世界から隔絶した時間を生きてきた。2年前に活動をはじめてから、世界の苦しみを知った。自分の歌を世界に届け、そして救うのだという決意。それができる力がウタにはあった。力の無い者たちのために立ち上がった。

ウタの計画はルフィとシャンクスたちによって阻止される。ウタは治療を拒み、衰弱する体を奮い立たせてウタワールドに取り残された人を解放するための歌を歌う。そしてルフィにシャンクスの帽子を被せ、新時代を託すかのようにして立ち去っていく。

世界をほとんど滅ぼしかける(あるいは救う)ところまで手をかけたウタ。ONE PIECEの作中においても、ここまでのことをしてのけた存在はなかなかいない。世界に名を轟かせるルフィと対等以上に渡り合った歌姫。そして、久々に会ったルフィを過去の思い出でからかいながら、最後は自分よりも背が高くなったルフィに、自身の思いを託して去っていく。これが大海賊時代の新星に並び立つ幼馴染である。凄まじい。幼馴染力、ヒロイン力、歌姫力、戦闘力、ラスボス力……どれをとっても満点の存在、それがウタ。ウタのライブ行きたい……えっ、応援上映? そういうのもあるのか……いいな…………

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