日記:おいしいものを食べる

元日は遅く起きてもよい。夜更かしと寝坊が世界から許されている。いつもは罪悪感と虚無感に苛まれながら昼頃に目を覚ます怠惰な自分も、今日ばかりかは胸を張って惰眠を貪ることができる。正月の朝が妙に心地よいのは、そういう意識も根底にあるのかもしれない。

おせちを食べる。おいしい。京都のお店のものらしい。もはやなんでもおいしく感じてしまう安上がりな舌だが、たまにおいしいものを食べると舌がそれに慣れてしまうのでよろしくない。今まで幸せだったものが、途端に色褪せてしまうような気がする。しかしその記憶も長続きはしないので、1週間も経てばまたあらゆるものをおいしくいただくようになっていることと思う。


「マクドナルド理論」というものがある。何人かで集まってランチをどこで食べようか決めかねているとき、とりあえず「マクドナルドはどう?」と水を向けると、「いや、マクドナルドはやめよう」と対案が次々に出てくる。このように、なかなか議論が進まないときに、その場で考えられる駄目な例を挙げることで、それに代わるアイディアを呼び込むという1つの技術のことを指すらしい。

なるほど確かに頷けるし、自分もたまにこのような形で話し合いを進めようとすることもある。だが自分はこの話を聞くたびに思う。「マクドナルド、行きたくない?」と。

マクドナルドが好きだ。あの味の濃いジャンクフードを身体がどうしても欲するときがある。あのポテトも特別だ。ほかのファーストフード店における芋々しいポテトもよいのだが、やはりマックのポテトが無性に食べたくなる瞬間がある。

だからどうしたって、自分にはマクドナルドが駄目な提案だとは思えない。相手がランチにマクドナルドを提案してきたら普通に乗ってしまう。もしその相手がマクドナルド理論を実践してきているのだとしたら、その目論見を裏切ってしまうことになると思う。なので、この理論の名前は改めるべきではないだろうか。「コンビニで買った10円ガム理論」とかに……。

別に10円ガムを貶しているわけではなくて、昼食には向いていないということなので……(10円ガムのファンに対する予防線)。


午後は友人に誘われて映画を見に行った。自分は正月に映画を見るという習慣はなかったのだけれど、劇場には結構人がいて、世の中は意外と動き出しているものなのだなと思った。あとファーストデイなのでお得。1年を通して、必ず休みであるファーストデイは元日くらいであろう。

「キングスマン:ファースト・エージェント」を見てきました。以下、感想です。


シリーズの前2作は見ていたのだけれど結構前のことで、内容が曖昧になっている部分も多いものの、どうやら前日譚とのことなのでなんとかなるだろうと思いながら見ることにした。

結果、特に問題はなかったように思う。細かい部分でのつながりを見落としている可能性はあるかもしれないが、少なくとも見ていて話がわからないということはなかった。

舞台は第一次世界大戦のヨーロッパ。キングスマンが誕生する発端となった最初の物語が描かれている。

歴史的な背景はこれを見るとよい(なぜゴー⭐︎ジャスさん……?好きなので嬉しいけど……)。自分は世界史の知識に乏しく、この動画も見ずに行ったので「そういうものなんだな……」と思いながら見ていた。

割と知っている名前もちらほら(FGOをプレイしていたので)。怪僧ラスプーチンや女スパイのマタ・ハリなど。歴史上の事件や人物が、実はこのような背景で動いていた……というフィクションを楽しむことができるのは、このような史実を題材にした作品の醍醐味である。メタルギアソリッド3とか、楽しいよね……(こちらも3作目にして前日譚)。

やはりこの映画の見どころはアクションシーンであるように思う。音楽や演出と巧みにリンクした戦闘は、スタイリッシュさと緊迫感をより洗練されたものへと昇華しているように感じられる。また、その場に至るまでに登場人物の決意が形成されていく過程も、比較的鬱屈としたものが続くため、その反動としてのバトルシーンにおけるカタルシスの解放はひとしおである。

シリーズとしての知識は必要ないので(「キングスマンという組織ができるまでの話なんだな……」くらいでよい)、この作品から見てもよいのではないかと思います。自分はシリーズを見ている立場からしか語れないので、もしかしたら見た方がいいのかもしれないのですが……。

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