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短歌連作・すこしずつ輪郭

 第63回短歌研究新人賞に応募した30首連作(予選通過)を今さら公開します。下の方に縦書き画像があります。よろしくお願いします。

すこしずつ輪郭  

伊縫七海

朝方の夢はまぶしい すこしずつ真水が滲みるように醒めゆく

年頃の娘と呼ばれくちのなか野菜ジュースがどろどろ温む

海ゆきの道にローソンも学校も置いとかないで(息がうるさい)

文字になれなかったチョーク屑たちに靴下染まっていってつめたい

消しごむは全部もげかけ 考えるのやめたら大人になれるらしいよ

母のおにぎり三角に握り直すとき友達の声がうっとり遠い

すりがらす濡らせばいっしゅん透き通る 透けたさきは無人のみずのみば

間違えておはようといえばおはようの笑顔で応えてくれる友達

ポカリスエットなんどでも振る いつもこの水平線はわたしが壊す

はつなつがさらりとなでて教科書は遺影遺影遺影遺影まみれ

ハイソックス痕なぞりつつ 少女とはわたしのことかと思えば痛い

いかにもな姿勢で鳩が死んでいる 血も出てないのにちゃんと死んでる

あっち側の警告音とこっち側の警告音がずれる踏切

ひとごろしゲームサウンドエフェクトで弟に骨抜かれるサンマ

十七年もぽかぽか生きた 目薬を舐めたら涙よりからかった

スカートのひだが緩んでスカートはわたしに似てスカートいつか死ぬ

何もかも愛せる日の来てしまうこと アイスの棒はアイスの甘さ

天井に貼ってた星図 嘘なんてことばをどこで覚えただろう

ふつうの父とふつうの母がおたがいのいびきを聞きつつねむりに落ちる

どの星もふつうにきれいでわたしまだ誘拐なんてされたことない

間違えて撮った夜空がうつくしく誰かに遺影につかいませんか

進路調査めちゃくちゃにしてこの夜のどこまでがテンプレートだろう

輪郭をもたないわたし 体温はぬいぐるみたちにたやすく滲みる

あのころは月をゆびさきでつまんでた 夢としらずに夢を見ていた

電柱までひかって見えるしわたしだけ死なないと思う(息が暴れる)

潮風はわたしを過ぎればただの風 スカートの裾ぎゅんと掴んで

永遠などない永遠などって叫ぶイヤホン解いて 耳があかるい

貝殻は踏んだら踏んだだけ割れる わたしはわたしになるまで生きる

すこしずつ輪郭を描いてゆくように何度も満ちる海のかたすみ

ポカリスエットそのまま海に投げ捨ててわたしが水平線の先端



えっと、恥ずかしいですね、とても
詠んでから半年以上放置してみると、上手い下手以前になんというか、高校生であることや若さを保証されていることだけにこんな意味を見出せていたなんてこの時は凄かったわねと思ってしまう。

最近よく考えるのだけど、正直若さの力とかよくわかんない。若さなんて、ぐにぐに定まらない自我と呆れるくらい足りない語彙しか持ってない私には、スカートとか進路調査とかの真っ青なイメージを借りてちまちま編むしかないんです。そういうもの。
もし若さが失ってから気づくものだというなら、失ってから書くのでいいじゃん。その時にもスカートはたぶん死に続けているので。

なんかひどく陰鬱なふりかえりになってしまったけど、とにかくまた沢山考えて詠んでぶつけられたらいいとは思っています。頑張るぞ。

あ、あと感想等ありましたらどんな小さなものでも投げて下さると嬉しいです、これは本当に、よろしくお願いします!!!!!!!!

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