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【 #いい会社帳 】no.03 TOMS Shoes(B Corp)
世界の“いい会社”のことを調べて紹介する「#いい会社帳」第3回は靴ブランドのTOMS(トムス)を取り上げます。
「#いい会社帳」についてはこちら↓
TOMSは、アメリカのロサンゼルスに拠点を置く、靴およびアパレルのブランドです。TOMSの特徴的な靴や、ロゴを見かけたことがあるひともいるかもしれません。
一足の靴が売れると、必要としているところに一足の靴を寄付する、という取り組みが有名です。
組織概要
会社名 :TOMS Shoes, LLC
創業 :2006年(カリフォルニア)
製品 :靴、洋服、サングラスなど
従業員数:約500名
会社のなりたち:
テキサス出身の創業者Blake Mycoskieが、2006年にアルゼンチンを訪れた際、子供たちに靴を届けるボランティア活動を手伝い、多くの靴を履かない子供たちに出会った。この経験から着想を得て、アルゼンチンでポピュラーなスリッポンAlpargataをアメリカのマーケットで販売し、一足の靴が売れるごとにアルゼンチンの若者に届けようと考えた。
B Corp認証取得:2018年11月
B Impact Score(※):121.5(前回は96.3)
(※)B Impact Assessment(社会や環境へのパフォーマンスを測るアセスメント)のスコア。認定B Corpになるためには80以上のスコアが必要。
B Corpでは毎年B Impact Assessmentのそれぞれの分野のスコアが上位10%に入る会社を「World Honoree」として公表していますが、TOMSは2019年にコミュニティ分野でのWorld Honoreeとなっています。
具体的に見ていきましょう。
1/3 of Profits for Grassroots Good
TOMSのコアには「事業を通じて、生活を改善する(improve lives)」というミッションがあります。
「One for One®︎」と彼らが呼ぶビジネスモデルは、すでに書いたように、TOMSの製品が売れるごとに必要としているところに靴を届けるという、TOMSの根幹をなすアイディアです。直接的に靴を届けるという取り組みから始まり、現在では別の形の支援へと広がっています。
それは、「1/3 OF PROFITS FOR GRASSROOTS GOOD」つまり、利益の1/3を草の根のgoodな活動に寄付するという取り組みです。
TOMSが”インパクト”について語るとき、それはまず、どんな草の根活動を支援したかや、寄付の額、そしてそれによってポジティブな影響を受けたと推定される人の数のことなのです。
フォーカス分野
TOMSは「equity(公平さ)」を追求していくことが人類の繁栄にとって重要だと考えており、公平さの土台作りを支援するという意味で、次の3つのフォーカスエリアを定めています。
・メンタルヘルスの促進
・銃による暴力を終わらせること
・有色の人々、LGBTQ+、女性、女の子に機会へのアクセスを増やすこと
パートナー例
・Centerpoint(イギリス)...ホームレス支援
・LIFE Camp, inc.(アメリカ)...銃暴力の防止
2019年&2020年の成果
・$4,436,000をパートナーに寄付
・7,049,436足の靴を提供
・パートナーの数:71(28ヵ国)
・従業員がパートナーの元を訪れて視察や手伝いを行うGiving Tripsの実施(毎年)
サステナビリティに関する目標
今後5年間のサステナビリティへのコミットメントとして以下を掲げています。
・地球フレンドリーな材料やプロセスに基づいた製品を増やしていく(「earthwise™️」の拡大)
・ゴミやエネルギー使用を減らしたり、靴の”寿命”プログラムの実施などによりB Corpの環境スコアを上げる
・2025年までに100%サステナブルなコットンを使用する
・パッケージには引き続きサステナブルに管理された森林の素材を使い、少なくとも80%リサイクルされた素材を使用する
・二酸化炭素の排出量を計測し、毎年改善する
・年次のインパクトレポートで進捗を報告する
earthwise™️
earthwise™️は、地球フレンドリーな素材やプロセスを基準以上使用している製品につけているラベルです。このラベルのついた製品を増やしていくことをコミットメントに掲げています。
基準には例えば以下のようなものがあります。
オーガニックコットン...100%
リサイクル・ポリエステル ...最低50%
リサイクル・ナイロン...最低50%
エコ繊維(ジュート、麻、リネン)...最低50%
植物染め...100%
その他のサステナビリティに関する取り組み
・工場の環境パフォーマンス
Leather Working Group(LWG)は、皮製品の工場に対して環境パフォーマンスに基づく評価を行う第三者機関です。TOMSでは、LWGのゴールドまたはシルバーの評価を受けている皮製品工場とのみ取引を行っています。
・サプライヤー行動規範
サプライヤー行動規範では、児童労働の禁止、強制労働の禁止、差別の禁止、賃金、労働時間、etc.について定めています。また、労働者の権利を守るグローバルのコレクティブFair Labor Association(FLA)に参加し、行動規範の作成などに役立てています。
・森林保護
森林保護のために企業に働きかけるCanopyの森林保護基準に基づき、全ての木製の素材についてサステナブルに管理された森林のものを使うようにしています。また、サステナブル・フォレスト・コミットメントにて森林を守るためのコミットメントを表明しています。
2019年&2020年のその他の活動実績
・TOMS COVID-19 GLOBAL GIVING FUNDを立ち上げて、5ヶ月にわたり利益の1/3にあたる$200Mをこのファンドに集め、COVID-19に関する活動を支援した
・Giving Tuesdayという、ボランティアへの参加を促すグローバルなイベントに参加するため、その日の店舗は閉めて従業員がボランティアに参加できるようにした。合計2158時間以上にのぼる時間をボランティアに充てることができた。
・Black Lives Matterへの寄付を含め、$135,000を、人種の不平等をなくすアクションのために寄付した
など
まとめと所感
私がTOMSのことを知ったのは、2011年頃、「One Day Without Shoes」というTOMSのキャンペーンとそれに対する批判を目にしたことでした。
「One Day Without Shoes」は、「靴なしで歩いてみよう!」というキャンペーンで、それによって靴のない生活をしている子供たちのことと、TOMSのOne for Oneの取り組みを知ってもらうという狙いがありました。
それに対する主な批判は、靴を無料で寄付することでローカルのお店に打撃を与えるだとか、自立を妨げるといったことでした。
その時私は「確かにそうだな」と思ったものですが、10年経ってTOMSのことを調べてみると、今は単に靴を与えるだけではなく、ローカルのコミュニティで活動する組織に対して利益を寄付するという形に進化していることを知りました。
TOMSにとって靴を売るというビジネスは手段。そこで得た利益をコミュニティの活動に還元し、「人々の生活の改善」に繋げていくことこそ、重要なのです。それゆえに、利益の1/3もの額を寄付するという行動を、大胆にも取ることができてしまう。これはなかなか真似できることではなさそうです。
一方で、フォーカスする社会課題を設定し、それに対する活動を行う団体を支援することなどは取り入れやすいかもしれません。
環境面の取り組みについては、コミットメントを掲げ、earthwiseなどの取り組みを進めているものの、まだ具体的な数値で示せるほどの実績はないように見えます。サプライヤーの行動基準は労働者に関する記述が中心で、サプライヤーに対して環境パフォーマンスをどこまで求めているかといったことがわかる内容は見つけられませんでした。2019年&2020年インパクトレポートにおいても、環境面の取り組みについては概要レベルに留まっており、書いてあるとおり「これから」なのだと思います。
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