【 #いい会社帳 】no.01 ダノンジャパン(B Corp)
「#いい会社帳」では、B Corpの認証を取得している会社を1社ずつピックアップして調べ、紹介していきます。世界の”いい会社”について一緒に学びましょう!
「#いい会社帳」の趣旨やB Corpについてはこちらの記事をご覧ください↓
「#いい会社帳」第一回目はダノンジャパンを取り上げます。紹介の順番は適当ですが、日本で住む私たちにとって全く馴染みのない会社よりはまずは身近なところからということで、日本の認定B Corpの中で一番知名度があると思われるダノンを選びました。
ダノンジャパンは日本でB Corp認証を取得した6社目(6社中)の会社で、「日本の大手消費財メーカーおよび食品業界で初のB Corp認証」とのこと。(数が少ないので「初」は当然といえば当然かもしれませんが。)
ちなみにダノン(本社:フランス)は世界120以上の地域で事業を展開していますが、2025年までにダノン全体でB Corpの認証を取得することを目指しており、ダノンジャパンは24番目の取得だそうです。(現在32の組織がすでに認証を取得済み)
(▲ danone.com よりB Corp認証取得済み組織と、B IMPACT ASSESSMENTのスコア)
なお今回はダノンジャパンの例を最初に取り上げつつ、後半でダノングループ全体のことを紹介していきたいと思います。
会社概要
会社名 :ダノンジャパン株式会社
事業 :チルド乳製品(ヨーグルト)の製造と販売、植物性食品の輸入・販売
従業員数:約360人
B Corp認証取得:2020年5月
B Impact Score(※):85.3
(※)B Impact Assessmentのスコア。認定B Corpになるためには80以上のスコアが必要。
ミッション(ダノン全体):
より多くの人々に、食を通じて健康をお届けする
会社の成り立ち:
1919年、創業者であるアイザック・カラソーが腸の疾患に苦しむ子供たちを救いたいと、乳製品を発酵させたヨーグルトを薬局で販売したのがはじまり。1980年に日本市場に参入。
”いい会社”概要
ダノンは、1972年に当時のCEOが掲げた「社会の発展なくして、企業の成功はない」という考えに基づく「デュアル・プロジェクト」という理念があります。これは、社会と共存しながら自社の持続的な成長を目指していくというダノンの経営方針につながっています。
もう一つキーワードとなるのは、「One Planet. One Health」というダノンのビジョン。
『食』は、私たちの健康や日々の暮らし、そして地球に影響を与えている。私たちが毎日の食事で何を口にするか意識して選ぶことで、健康な体や健全な地球環境など私たちが本当に求める世界を実現することができる
− 「ダノンの約束」(http://www.danone.co.jp/company/pledge/)より
この考えから、健全な地球と人々の健康のために貢献していくことを約束しています。
具体的な取り組み(ダノンジャパン)
・多様なヨーグルト製品で、全世代の健康に貢献
・群馬県館林市の工場にて地域の子供たちに健康や栄養に関するセッションを行うなど、人々の健康とサステナブルな地球環境のために地域コミュニティと連携
・循環型社会の実践を試みるリサイクルセンターの稼働(廃棄物のリサイクル買取、廃棄物分別作業での福祉施設との連携、廃棄物の削減など)
・全ての製品で着色料、人工甘味料、人工香料を使わないなど素材へのこだわりと、原材料の原産国の公開などを顧客に約束
グループ全体での取り組みなど
ここまでダノンジャパンの取り組み等を取り上げてきましたが、ダノンジャパンのホームページは主に顧客向けの情報発信に偏っている印象で、社会や環境への取り組みについては概要レベルでしか把握することができません。どこまで本気で取り組んでいるのかは実はわかりづらいところがあります。
翻ってダノングループの本サイト(danone.com)の方に飛んでみると、社会や環境に対する取り組みの詳細や実績、根本の理念などについてかなりのページ数が割かれておりダノンの本気が見えてきました。
以下では、danone.com の情報をもとにグループ全体の方針や取り組みなどについて抜粋して取り上げていきます。
ダノンのメッセージ
サイトを開くとまず飛び込んでくるのはこのメッセージ。
Each time we eat and drink, We can vote for the world we want
私たちは食べたり飲んだりするたびに、私たちが欲しい世界のために投票することができる(直訳)
これはサイト内で、何度も繰り返し「We belive」とセットで出てくる言葉です。上で紹介したダノンのビジョン「One Planet. One Health」、すなわち「人々の健康と地球の健康は繋がっている」という考え方とも繋がっており、ダノンが発信する非常に重要なメッセージであることがわかります。
フード革命
またこれも繰り返し出てくる「food revolution(フード革命)」という言葉があります。
フード革命は、一言で言えば、「より健康的でサステナブルな食習慣の発展を目指すムーブメント」です。
今日、人々は「食べているものがどこからきているのか、どのように育てられているのか、人の身体や地球に対してどのようなインパクトを与えるのか」について関心を持っており、そのような人たちがフード革命の中心にいるといいます。
消費者たちは変化を強く望んでいます。彼らは、ダノンのような大きな組織に対して、世界がより良い方向へ変わっていくように大きなインパクトをもたらすことを期待しています。
ダノンのような食べ物を扱う会社は、「標準的なフードシステムを捨てて、地産地消に基づく新しいフードシステムに移行していくようビジネスモデルを転換することで、フード革命における重要な役割を果たすことができる」というふうに述べています。
Danone 2030 GOALS
では、上記のような信念をもとに、具体的にどのような目標を立て、これまでに実践をしてきているのでしょうか。
ダノンでは、BUSINESS MODEL、BRAND MODEL、TRUST MODELの3つに分類された9つの大項目からなるDANONE 2030 GOALSを定めています。それぞれのGOALはSDGsと関連づけられています。
「Company Dashboard 2019」から、ゴールの内容と実績についてかいつまんで紹介したいと思います。
【BUSINESS MODEL】
▶︎優れたフードエクスペリエンスを提供し、新境地を開拓し続ける
(指標例)
▷食の安全性と品質:FSSC 22000認証を取得している生産拠点(=食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)
2018 :74%
2019 :86%
TARGET:100% by 2020
▷植物由来製品の事業を3倍にする
2018 :€1.7bn
2019 :€1.96bn
TARGET:€5bn by 2025
▶︎サステナブルで収益性のある成長を実現する
(指標例省略)
▶︎B Corpの認証を取得する
(指標例省略)
【BRAND MODEL】
▶︎地域ごとで人々の健康に寄与する
(指標例)
▷2020 Nutritional Targetsの内容を満たす製品の数
(砂糖、飽和脂肪、塩に関する目標を満たしている製品の数)
2018 :78%
2019 :82%
TARGET:100% by 2020
▶︎マニフェストブランドを育てる
マニフェストブランドとは、真の活動家として行動するパーパスドリブンのブランドのことです。そのようなブランドは、消費者やコミュニティにとって重要な社会や健康、環境のイシューに基づく目的を追求し、サステナブルで収益性のある成長をしながら同時にポジティブなソーシャルインパクトを生み出すことにコミットします。
(指標例)
▷マニフェストブランドの旅にすでに乗り出している事業(=目的を定め、アクションの方策を練り始めているビジネス)
2018 :65%
2019 :90%
TARGET:100% by 2020
▶︎地球の資源を保護し回復する
(指標例)
▷対気候変動:カーボンニュートラル(TARGET:by 2020)
・ダノン全体でのCO2排出量の削減(CO2換算のg / 売れた製品のkg)
2018 :15.6%
2019 :24.8%
TARGET:50% by 2030
・再生可能電力
2018 :34.2%
2019 :42.4%
TARGET:100% by 2030
▷リジェネラティブ農業(再生農業)
・EDP(乳製品&プラントベース製品)事業におけるアニマルウェルフェアの要件を満たしているフレッシュミルクの量
2018 :43%
2019 :81%
TARGET:80% by 2020
▷水の管理
・2000年からの業務上の水消費量の減少率
2018 :48%
2019 :49%
TARGET:60% by 2020
▷サーキュラーエコノミー
・リサイクルかリユースか堆肥化可能なパッケージ
2018 :80.3%
2019 :81.3%
TARGET:100% by 2025
・ウォーター事業におけるリサイクルPETの平均使用率
2018 :12%
2019 :16%
TARGET:50% by 2025
【TRUST MODEL】
▶︎ダノンで働く人々に、新しい未来の創造を任せる
(指標例)
▷インクルーシブ・ダイバーシティ
・幹部レベルの女性の割合
2018 :26%
2019 :27%
TARGET:30% by 2020
・幹部レベルのunderrepresentedな国籍(平等に取り上げられていなかった=アフリカ、南北アメリカ、アジア、東ヨーロッパ、オセアニア地域の国)の人の割合
2018 :28%
2019 :30%
TARGET:30% by 2020
▷ヘルスケア
・Dan'Caresまたは同等の健康保険が適用されている従業員
2018 :74,420
2019 :99,627
TARGET:100%
▶︎インクルーシブな成長の促進
(2019年ハイライト例)
▷ダノンコミュニティーズ
安全な飲料水と栄養へのアクセスを提供することによって貧困とたたかうソーシャルビジネス
・投資額:€12.8M
・15ヵ国、12ソーシャルビジネス
・栄養失調に対する取り組みによる受益者:30万人
・安全な飲料水の取り組みによる受益者:5千700万人
▷原材料の生産者との取り組み
・ダノンがミルクを調達している農家の数:58,000
・そのうち小規模農家(牛10匹以下)の割合:約80%
・トレーサビリティ
・サトウキビ:製粉までのトレーサビリティ:36%
・果物:サプライヤーまでのトレーサビリティ:100%
・カカオ:生産国までのトレーサビリティ:70%
など
▶︎パートナーとともに、フード革命のために尽力する
(2019年ハイライト例)詳細は割愛
・より大きなインパクトのためにビジネス連合やイニシアティブを構築する
・グローバルな課題に対する前進のために国際組織と連携する
・新しい消費モデルを作るために業界全体で連携する
・パッケージのサーキュラーエコノミーへの移行を促進する
・食の未来への投資
以上、DANONE 2030 GOALSの内容と実績の抜粋版でした。さらに詳細に興味がある人は、ぜひ資料を覗いてみてください。
https://www.danone.com/content/dam/danone-corp/danone-com/rai/2019/pdf/2030-goals-company-dashboard-2019.pdf
まとめと所感
結構長くなってしまいましたが、これでもほんの一部にすぎません。danone.comのサイトには、今回触れていない情報もまだまだたくさんあります。一つ一つの項目の説明も非常に長いですし、なんてテキスト量の多いサイトなんだ!と驚くほどです。
なぜこんなに説明的なのか、ということを考えてみると、もちろん一つには透明性を重視しているということもあると思いますが、「One Planet. One Health」というビジョンや、社会の発展とビジネスの成功両方にコミットするというデュアルプロジェクトといったものが、口だけでなく真に重要なコアであるということだと思います。様々なステークホルダーに対してそれをしっかり伝えていくことが、ビジョンの実現にとって必要なことであるという認識もあると思われます。小手先でないブランディングとはこういうことかもしれません。
上で紹介した「フード革命」に関する記述では、ダノンのような巨大な企業だからこそ、人々や地球の健康に対して重要な役割を果たすことができる、そのためにビジネスモデルの転換を推進していく、ということが語られています。これはフード革命に参加する人々の期待を背負っているからということと同時に、ミッションである「より多くの人々に、食を通じて健康をお届けする」ためには地球も健全に保たなければならない、という信念からくるものです。
ビジョンが形だけのものでないことは、DANONE 2030 GOALSなどからもわかります。細かく設定されている具体目標の中には、ファイナンス以外の指標が多くを占めています。中にはターゲットの目標に対してまだ実績が振るわないものもありますが、そうした数字も含め隠さずに全て公開しているという様からも覚悟が伺えます。現在地を知ることから改善は始まる、ということを改めて感じます。
(逆にこれだけ色々と取り組んでいるように見えても、ダノン全体でB IMPACT ASSESMENT(B Corpの認証取得に必要なアセスメント)の平均スコアは86.1であるということを考えると(スコアが90や100を超える会社もあるなかで)、認定B Corpのハードルの高さを感じます。)
DANONE 2030 GOALSに出てくる指標の数々は、他の食品の会社や、SDGsに取り組みたいと思いながらなかなか具体的な指標に落とすことができない会社などにも参考になりそうだと感じました。
***
1社目ということで、まだ他の認定B Corpsがどんなことにどのくらい取り組んでいるのか私自身も把握できておらず、比較が難しいところですが、個人的にはダノンの取り組みには感動しました。
ダノンは、食品業界で、巨大なグローバル企業というカテゴリでしたが、今後また様々なカテゴリの会社を見ていくことで、B Corpや”いい会社”の条件について理解を深めながら、またそのうちダノンを振り返ってみるということもしたいと思います。
今後深掘りしたいキーワード
今回の調査の中で出てきたけど深掘りできなかったキーワードたち。ここで取り上げると長くなり過ぎてしまうので、また別途調べてアップしたいと思います。
・Entreprise à Mission
2019年にフランスの法律の中で定められた会社のモデル。社会的・環境的な目標が会社自体の存在意義に沿っており、定款にも記されている会社と定義されている。ダノンは初めてEntreprise a Missionとして認められた会社。
・MSCI ESG RAITINGS、SUSTAINALYTICS、vigeoeirisなどの外部認証系
ダノンは、様々な社会的・環境的なパフォーマンスについての第三者的な評価やESG格付けなどを受けている。
・regenerative agriculture リジェネラティブ農業(再生農業)
「ダノンは土を守り、農家をエンパワーし、アニマルウェルフェアを促進するために、リジェネラティブな農業を推進している」
・カーボンニュートラルと関連キーワード:GREEN HOUSE GAS PROTOCOL、SCIENCE BASED TARGETS、RE100など
・(パッケージの)サーキュラーエコノミー、NaturALL Bottle Alliance(ナチュラル・ボトル・アライアンス)
↓ダノンのパッケージングポリシー
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