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観光地で観光をしない一日

先週末、スウェーデンの首都のストックホルムを日帰りで訪れた。早朝の電車に乗って地元の駅から約5時間の道のり、帰りは夜の11時発の夜行バスで帰るという日程だった。
スウェーデンの運転免許証に切り替える為の書類を受け取りに行ったのだけど、その書類が現金での支払いしか受け付けておらず、現地に受け取りに行ってくれる友人もいないので、仕方なく上北したというわけだ。

日本人の感覚からすると、ストックホルムに行くとなると、ちょっと心が踊る。日本から行くとなると、それはもう立派な旅行だ。着いたら何をして過ごそうかなと、うきうきすると思う。
予定を組み始めた当初は、向こうで何かをしようかなと、ホテルの値段を調べてみたりもした。でも結局は、日帰りで行くことにした。
なので、あることを決めた。

「観光地に下調べせずに行き、ノープランで過ごそう」と。

私はどこかに出かける際、最低でもレストランの場所は調べてから行く。せっかく出かけたのに、おいしいものを食べずに帰るのはもったいないと思っている。でも、今回はレストランも調べない。博物館や公園もマークしない。観光地で用事を済ませてぶらぶら過ごす、なのだ。
しかし、ノープランと謳いながらも、映画のチケットだけは購入した。用事さえ済ませてしまえば一日をひとりで過ごせるまたとない機会であり、映画を観るには最適だからだ。

とにかく、自分にしてみれば、大した予定のないノープランだ。
観光地で、ノープラン。これは私にすれば、新しい出来事だと言える。
着いた駅から北に向かって歩いていると思いきや、西に外れている。体が勝手に気持ちのいい方へ、緑が多い道に引き寄せられる。海に辿り着いて、地下鉄に乗る。ああ、自由だなとおもう。
ひたすらに歩いて用事を済ませて、またひたすらに歩く。勧められた観光地をやりすごし、港を眺めながら歩く。スウェーデンとはいえ、さすがに首都は雰囲気が広大で感心する。

普段と同じように、過ごすこと。都会で(首都なので)、観光地で、いつもと違わない時間を過ごす。これって、すごく贅沢な時間の使い方なんじゃないかな。
観光をしない、レストランを探さない、必要以上に地図を見ない。この3点から解き放されて、体はとても軽く感じる。
観光地で何かをしなければいけないなんて、そんなことは全然なかったのだ。

姉に頼まれた買い物を中心に、街中をぶらぶら、ショッピングぶらぶら。ご飯なんて、映画の前にマクドでハンバーガーを食べて終わり。平日の夕方の、がらがらに空いた席の映画館。映画を観終えたら、駅までゆっくり歩きながら夏の長夜を遊ぶ。そして一日の締めに、パブでビールを飲む。歩き疲れた体は、ビールを呼ぶ。このタイミング、外で飲むプレッシャーのビールが、めっちゃおいしい。

観光をしないと決めたこの一日、飲んで食べて買って映画を観て歩いただけ…っていうと、側からみれば思いっきり観光している様だったと思う。でも、私にとっては「観光をしない一日」だったのだ。疲れて億劫になったわけでもなく、時間があるのに端から観光をしないと決めて過ごしたことは、今までなかったように思う。

「観光地で観光をしない一日」
もし時間や体に余裕があれば、やってみていいんじゃないかなと思う。自分の中で何もしないと決めて過ごす一日は、なかなかによかったです。


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