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ラグビーのわかりやすさ、eスポーツのわかりづらさ

ラグビーワールドカップが、ちゃんと盛り上がっている。

始まるまでは、メディアの盛り上げようとする意志の方を強く出てしまっていて、実際に盛り上がっているのか、ついてきているのかがわからなかった。しかし始まってみれば、街中にラグビーウェアを着たガタイのいい人はいっぱいいるし、パブリックビューイングスポットは大盛況だ。よかったよかった。かつてラグビーの仕事も少ししていた身としても、安堵である。

ちゃんと盛り上がるのか?と懸念していたのは「ラグビーのルールはわかりづらい」と考えていたからだ。選手がぶつかりあってボールを奪い、相手陣地に走る。手でのパスは前にしてはいけない、キックのみOK。そこまでわかっていても試合で何が起きているかわからない。何のファウルが起きて、何故プレイが止まっているかもわからない。アメフトならアイシールド21の知識でなんとかわかるが、プレーの止まり方は大きく異なる。

そう思っていた時、妻からの言葉で衝撃を受けた。

「そんなこと言ったらサッカーもわかりづらい」

まじか。いや、確かにそうか。
サッカーはたまたま学校の体育でやる機会も多く、プロの試合を観に行ったりテレビ中継やゲームも含めて触れる機会が多く、ルールやどういうプレーが行われているかは私はわかっている/知っている。しかし、そうでないルートを辿るーー体育でサッカーを選択しない、自分でやったことがない等ーー場合、確かにサッカーも何をやっているか観ていてわからないかもしれない。攻めているのにオフサイドなるものでプレーは止まるし、自陣でボールを回している状態が一体どういう状況なのかもわかりづらい。

その点、ラグビーはスポーツ観戦においてとてもわかりやすい
基本は陣取り合戦である故、ボールおよび選手のラインがどこにあるかで攻めている/攻められている状況が一目瞭然だ。これがとても大きい。ボールを持ってラインを越えれば点になり、喜ぶ。バーっと抜け出して走ると盛り上がる。キックやリスタート方法は正直僕もよくわからない。しかし、どこで固唾を呑み、どこで声を出せばいいか、特に初見の人にとってはサッカーよりも圧倒的に明確だ。

陣取り合戦のポイントとなるのは攻守の切り替えだ。相手のパスを奪うといったプレーは説明がなくともわかるが、反則によっても攻守の切り替えが発生する(試合ではこちらの方が多そうだ)。そこで、反則についてはどうしても観戦者に理解してもらわなければならない。でないと、何が起きているのか・何を狙っているのかが途端にわからなくなり、面白くなくなる。おそらくラグビー業界も重々承知しているはずで、中継では反則が起きる度に説明のテロップが流れ、実況者は説明をする。なぜ反則なのか、なぜ自チームが/相手チームが喜んでいるのか。そこさえわかれば、ラグビー観戦は楽しむことが出来る。だからラグビーはスポーツの興業面において本当は強い。


詳しくない人が観ても楽しめるか

スポーツにおいて、それが興業的側面を持つ限り切っても切り離せないポイントだと思う。

例えばeスポーツで考えてみる。
ゲームをプレイしない、詳しくない人でも格闘ゲームは観ていて楽しめると言う。体力ゲージがあり、長い方が有利で残り少ないとピンチだ。攻撃が当たると体力ゲージは減り、試合が動く。つまり楽しむポイントが可視化され、かつ普遍的にわかりやすい。スポーツの方の格闘技は鬩ぎ合いや間の取り方が重要になってくるが、ゲームと比較すると玄人向きかもしれない。

そうなると今は一大ジャンルとなっている、複数人で役割分担して相手の基地の耐久力を減らす、といったようなゲームは観ないといけないポイントも多く、画面表示上も細かいが故に、興業としてメジャースポーツ足りうるまで観戦者をこれ以上増やすことは難しいだろう。FPSやTPSもそう、わかりづらいのだ。
eスポーツも興業であるから、プレイヤーだけでなく観戦者も含めて裾野をいかに広げられるかにかかっていると思っている(そしてその辺りをちゃんと考えられているのはテレビ局だったりする)。


と言ってもラグビーもルールを知るともっと面白いんだろう。
これからの試合も楽しみ。





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