「ガンダムは何から観るべきか」問題の結論
先週このようなツイートを目にした。
ガンダムとは最も有名なロボットアニメであり、アニメ好き・アニメ周辺のオタクであれば見ていて当然、知ってて当然という暗黙の了解がある。この空気の中で話を合わせて「〇〇とは違うのだよ!〇〇とは!」と無理めなネタに愛想笑いしたり"シャア"を"シャー"と書かないようにしたりさぞ大変だったろう。。しかも、今からガンダムに入門しようと思ってもテレビアニメだけでも18本(しかもそれぞれ4クール=1年分ある)、これに映画やOVA、漫画や小説にゲームとめちゃめちゃな本数があり、何から入って何を観ればいいかわかるはずがない。詳しい人に聞いたところで答えもバラバラだ。
「ガンダムは何から観るべきか」この問題に決着をつけよう。
ゴールと前提条件の設定
ガンダムで何を観るべきかについて語られたブログは検索すれば結構ヒットする。ただ、どれもその人が好きな良い作品をオススメしているものであり、ガンダムとは何かをわかっていないとちんぷんかんぷんなまま観終わってしまい入門にはならないと思われる(ただ良いものを勧めるだけでいいなら、私なら「ポケットの中の戦争」を観せて泣かせた後「ガンダムセンチネル」を密室で熟読させる)。ちゃんとゴールを設定し、その上で作品を取り上げるべきだろう。
・ゴール
ツイートのような不幸を解消できるよう、下記がクリアできてガンダムの会話に入れることをゴールとする。
①モビルスーツやスペースコロニー等、ガンダム世界に共通する基礎的な用語や世界観を理解
②各作品の配置や関係性、広がりを理解(宇宙世紀の繋がり等)
③「親父にもぶたれたことないのに!」や「俺がガンダムだ」等、よくネタにされる会話やシーンを把握
・前提条件
これだけでは「全作品観ればおk」になってしまうので前提となる条件を設定する。あくまで入門であり、ここからガンダムを好きになってもらいたいので鑑賞負荷を大きくし過ぎないこととする。いきなり「アニメ2年分を観ろ」はただの鬼だ。
プランの考察
まず、ガンダムの各作品の関係性を図にしてみる。
主な映像作品(+趣味)だけでこれだけあり、作品によってつながりがあったりなかったりするが、基本的には宇宙世紀という同じ世界の中での話があり、それ以外はそれぞれ独立した世界のお話だと思ってもらえればよい。∀ガンダムは別世界含め全ての作品を包括して更に未来の話…とより一層ハイレベルなので注意。
では実際にプランを考えてみる。
案① SEEDから入る
ガンダムSEED(全50話)→ガンダムSEED Destiny(全50話)
ガンダムSEEDは元々「新しい世代に向けた、新たなスタンダードとなりうるガンダム」を目指して制作された[1]。そのため大気圏突入軌道が逸れた先の砂漠で主人公をおじさんが助けてくれる等、初代機動戦士ガンダムをオマージュにしたシーンが多い。実際SEEDから入った人も多いだろう。
ただいかんせん全部これから観るとなると2年分は長い。あとDestinyの後半は主人公の改心ポイントがわからなかったりそもそも主人公が誰かわからなくなってくるのでオススメできない(私見です)。
途中まではいいよ。特に34話「悪夢」のインパルス対フリーダムは、それまで既存画の使い回し戦闘シーンが多かったSEEDなのにいきなり大量の新規作画&斬新な戦い方でとてもカッコいい。聖人化したキラに対してちょっとイラっとしていた視聴者に大きなカタルシスを与えたはず。決着シーンはプラモにもなったしね。
案② ユニコーンから入る
機動戦士ガンダムUC(OVA全7話)
今やお台場に実物大立像が建立されるほどガンダムの顔となったユニコーンガンダム。2010年代の作品なので絵も綺麗で、最もアレルギーが起きづらいだろう。澤野弘之さんの音楽も素晴らしく、Aimerに提供したepisode 7の主題歌「StarRingChild」は全ガンダム史の中でも最高傑作なのでこれだけでも聴いて。まじで。
しかしこの作品はファーストから始まる宇宙世紀の総仕上げ的位置付けであり、お話を理解するにはファースト→Z→ZZ→逆襲のシャアの知識が不可欠。もし更にepisode 4「重力の井戸の底で」でテンションをMAXにしたいのであれば、各OVAまでカバーした後、MSVの関連書籍を読み漁りセガサターンで戦慄のブルーをプレイしなければならない。非常に要求レベルの高い作品である。間違って「ユニコーン好きなんですよねー」と軽々しく話題に出すと、グフ重装型が動き(マジで動いただけ)、ガンキャノンディテクターとガンタンクⅡが並んで砲撃し、ネモⅢが一瞬でやられた瞬間の感情をオタク特有のマシンガントークで語られてしまうので注意。あとはコックピット内のインターフェイス表現やビームによって装甲が焼かれる表現も革新的で、アラートの鳴り方やダメージの入り方等、それまでのガンダムシリーズから全方位的にアップデートをかけて来ている点も語りたいんで誰か飲みましょう。
案③ 鉄血のオルフェンズから入る
鉄血のオルフェンズ(全50話)
ではより最近のシリーズから入ってみるとどうか?しかも独立した話なので前提知識が必要ない。
しかしガンダムの入門と考えるなら、これはオススメできない。オルフェンズは良くも悪くもガンダムらしくない(僕は好き)。ガンダムのテレビシリーズはほとんどの場合、大きな戦争が行われている中の一視点を切り出した、青年たちによる群像劇を描いていて、それがガンダムらしさの特徴の1つでありファーストが「リアルなロボットアニメ」として革新的だったポイントであった。しかしオルフェンズは巨大政権下でのレジスタンスの物語であり、特に前半はどちらかと言えばコードギアス的でガンダムらしくはない。
作品としても賛否に分かれた作品であるが、それも相まってネタに使われることは非常に多い。特に「止まるんじゃねえぞ」はクライマックスの非常にシリアスなシーンであるにも関わらずコラ素材に使いたくなるような構図であったため、放送直後からネット民の餌食になり今でも現役である。髪型のせいもあったかな。
また、他のガンダムと違ってメインの武器がビーム兵器でなく実体剣、実体弾であったのも大きな特徴。主人公機の最初の武装はメイス(刃のついたハンマー)だしモビルスーツをちぎるハサミも出てくるし作中一番強い兵器がデカい杭でこれまた最後に賛否を分けてしまった。重ねて言うが僕はオルフェンズ好きだよ。
案④ ガンダムWから入る
新機動戦記ガンダムW(全49話)→劇場版ガンダムW Endless Waltz
他と独立し、ガンダムらしい作品となるとガンダムWはオススメかもしれない。さすがに23年前の作品(マジかよ)なので絵が古く感じるかもしれないが、当時女性ファンを新規大量獲得した作品でもありストレス少なく観れるはず。多少テーマを盛り込み過ぎた部分もあるが、戦争論から機械哲学まで考えさせようというのはガンダムらしい。AIによる戦争は、むしろ今語られるべきテーマであり、現代社会においても人間同士の戦いの崇高さ、エレガントさを重要視したトレーズ様の思想は価値を持つだろう。全体的にシリアストーンで進むのだが、主人公のヒイロから敵将のトレーズまで偏った人間性と人生観ゆえにネタの宝庫となっているのも嬉しい。そりゃヒロインに「お前を殺す」とか言うし招待状はビリビリに破くしトレーズ様は今まで食べたパンの数を覚えてそうだし。所謂リアルさはあまり無く、劇場版ではガンダムに羽根が生えるのでリアルとかその辺が気になるは注意。あなたの緑川光はどこから?私はヒイロから!
他にも平成ガンダムではガンダムXも他と独立していて入りやすい。しかもこちらは1年分と思いきや途中打ち切り(放送期間短縮)なので39話で終わる!(僕は好きですってば)
案⑤ やっぱりファーストから入る
ある程度のネタを理解しつつ、ガンダムと言うものを知るにはやはりファーストは外せないのかもしれない。山手線のスタンプラリーにも見れるように今なお人を寄せ付ける魅力もある。絵が古いのは気になると思うがそれこそが歴史であると思えば乗り切れる。実際、絵の古さによるファジーさが後の作品や外伝のモビルスーツデザインが入りこむ余地となっていてガンダムサーガの魅力を生み出す装置になっていることを忘れてはならない。と言うわけで、私の一番のおすすめはこれ。
機動戦士ガンダム劇場版3部作→機動戦士Zガンダム劇場版3部作→逆襲のシャア→機動戦士ガンダムUC(OVA 7本)
ぱっと見ではめちゃめちゃ多い気がするが、映画7本にOVA7本の合計1,339分である。30分アニメで換算すると大体54話分なので約1年分。ただこの中に合計4作品ありジェットコースターのように話が進むので普通にアニメ4クール観るより短く感じるだろう。しかも全部観れば宇宙世紀とニュータイプについては語れるようになるし、これ以外の作品のネタが話題になった場合は「あー、宇宙世紀のやつしか見てないんですよねー」で納得される。ZZは実はほとんどの人が本編を観ておらずスパロボかGジェネの知識しかない(偏見)から安心してほしい。
最近、アニメが好きという人は増えたと思っている。作品数自体が増えて間口が増えたのと、スマホゲー拡大も理由だと考える。でもその中からガンダムを好きになっている人はあまりおらず、理由を聞いてみれば「何から観ればいいかわからない(作品数多過ぎんじゃボケ)」という意見が多かったので本エントリーを書いてみた次第。
ぶっちゃけ好きそうな絵か好きな声優さんが出てる作品を見てもらうのが一番だけど、あえて言うなら…と考えてみた。
もしも好きになってくれたなら、その後はポケットの中の戦争を見てストーリーと浪川さんの成長に涙して0083で大塚明夫さんの声に酔いしれF91で森口博子とアニメ主題歌の関係性に思いを馳せGガンダムでガンダムの既成概念を壊して熱くなりガンダムXで大人へのなり方を学びターンエーガンダムで全てを受け入れる度量を持ちガンダムセンチネルでカトキ信者になりビルドファイターズで少年の気持ちを思い出してほしい。
ダブルオー入れるのを忘れた。
↓プラモデルも作ってます