―雲外蒼天― 藤井聡太竜王・名人、八冠のその先に
藤井聡太竜王・名人、八冠達成おめでとうございます!
羽生善治九段の全七冠制覇から27年、将棋界の歴史に新たな1ページが刻まれました。
2017年、叡王戦がタイトル戦に昇格したとき、
「藤井聡太のためのタイトル戦だな」
と、どなたかの棋士のコメントが記事になっていたことが忘れられません。
羽生七冠を超える、八冠。
それを超えさせるためのタイトル戦だ、との軽い揶揄でしょうが、当時の藤井四段は、まだ棋士になったばかり。
調べてみると、叡王戦のタイトル昇格が発表された2017年5月20日時点で、藤井四段はデビュー18連勝を記録しています。
すでに藤井フィーバーは将棋界を席巻していたとはいえ、「天才中学生」の枠だった藤井四段。
このとき、八冠など遥か彼方の夢でした。
羽生七冠を超える、といってもまるで現実味がありません。
三冠以上を同時に保持した棋士すら、現在の藤井・竜王名人を含めて10人しかいないのですから。
八冠 藤井聡太
七冠 羽生善治
五冠 大山康晴、中原誠
四冠 米長邦雄、谷川浩司
三冠 升田幸三、森内俊之、渡辺明、豊島将之
(敬称略)
それから、わずか6年余りでの快挙。
いま思うと、「藤井聡太のためのタイトル戦」とコメントされた慧眼に感服します。
今期、王座戦五番勝負を戦った永瀬拓矢王座と藤井竜王・名人が研究会仲間であることはよく知られています。
その出会いは、2017年3月から4月にかけてAbemaTVで配信された「藤井聡太四段 炎の七番勝負-New Generation Story-」
当時のトップ棋士や後のタイトルホルダーを相手に6勝した藤井四段に対し、唯一勝利したのが永瀬六段(当時)でした。
そこから研究会を始め、お互いを高め合うなかで今期の王座戦を迎えたことには、運命を感じざるを得ません。
全冠制覇と名誉王座がかかる一戦は、シリーズを通じて永瀬王座が優勢でした。
綿密な研究、工夫の作戦から、明らかに勝勢の局面まで何度もたどり着きました。
しかし、ときに勝負は残酷です。
掌中にあったはずの勝利は零れ落ち、1勝3敗で王座失冠に至りました。
第3局で自らの顔を二度叩き、第4局では頭をかきむしる様子は見ている側も辛いものです。
それでもファンの前で、気丈にコメントされた姿には、胸に迫るものがありました。
藤井新王座を上回るほどの万雷の拍手が、それを物語っていたと思います。
少し調べたところ、獲得したばかりの王座を除き、「藤井二冠」から「藤井七冠」の間では、「藤井三冠」の期間が61日と最も短く(王位、叡王、棋聖)、「藤井五冠」が401日と最も長かったようです(竜王、王位、叡王、王将、棋聖)。
なお、全冠制覇の先駆者「羽生七冠」は167日間でした。
藤井八冠の時代がどれだけ続くのか。
果たして、八冠のその先はあるのか。
雲外蒼天
努力して困難を乗り越えた先には明るい青空がある、という意味です。
藤井竜王・名人は、タイトル獲得後、この言葉を揮毫されたこともありました。
雲を抜けた向こうに何があるのか。
きっと、我々将棋ファンには見えないものを見据えておられることでしょう。
これからも藤井聡太の盤上の物語は、変わらず紡がれていくはずです。
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