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本の思い出 「水晶のピラミッド」と島田荘司
中学生の頃、司馬遼太郎と並んで耽読したのが島田荘司作品でした。
大掛かりなトリック、風変わりで切れ味鋭い探偵、御手洗潔。
そのシリーズのなかで、特に印象深いのが「水晶のピラミッド」です。
古代エジプト、タイタニック、現代アメリカの事件が入れ替わりながら展開され、ページをめくるのももどかしく読み進めたものです。
私がこの本を読んだのは、映画タイタニックの公開前。
名前くらいしか知らなかった豪華客船の沈没が、文中色鮮やかに描かれる様に圧倒され、その余韻が残るなか観た映画の世界が「水晶のピラミッド」そのものだったことに、さらに驚かされました。
映画の前に読んで良かった。
心からそう思いました。
主人公たる御手洗が登場するのは、分厚い本の半ばから。
それを退屈だと思わせない筆力には感服するばかりです。
「占星術殺人事件」を彷彿とさせる御手洗の不調と看破。
「文明の中心は西に動く」という洞察に、なるほどと思いながらも、文明が各駅停車とは限らないだろうと感じたのは、すでにバブルが崩壊し、失われた○年に突入していたからでしょう。
結末こそ意を得たものとは言い難いものの、壮大なストーリーと文明論、そして鮮烈な描写は今でも深く記憶に残っています。
御手洗シリーズでは、「占星術殺人事件」の冒頭、梅沢平吉の手記に引き込まれ、「御手洗潔のダンス」の「近況報告」を繰り返し読んでいました。
御手洗もの以外では、短編集の「展望塔の殺人」や「毒を売る女」も良いですね。
収録作「糸ノコとジグザグ」では彼の活躍を読むことができます。
ほかに、「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」は島田作品でもとりわけ好きな一作で、いつかnoteで書く機会があればと思っています。
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