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25.認識翼賛会宣言

 突然だが、次の衆議院選挙に立候補しようと思う。その際は読者の皆様に色々とご協力願いたいのだが、まずは出馬を決意するに至った経緯を説明するのが筋だろう。少しお話させて頂きたい。

 先日、丸亀製麵で昼食をとった。丸亀製麺のシステムについて今更説明する必要はないのかもしれないが、まずはうどんを注文だ。うどんを受け取ったら天ぷらやおにぎりが置いてあるコーナーへ。ここでお好みの天ぷらをセルフスタイルでお皿にとり、そこを抜けたらレジでお会計という流れだ。これは分岐の無い一方通行のルートゆえ、一直線にお客さんが並ぶことになる。ゆえに天ぷらコーナーでモタモタしてると他のお客さんから「ふん、丸亀喰いとして三流だな」と蔑まれるおそれがあるのでテキパキと行動しないとならない。後ろに並んでいる同胞に迷惑をかけぬよう、最大限の配慮をするのはジャンクフード喰いとして必須のマナーだ。

 この日の胃袋が定番である釜揚げうどんと海老天、そしてかしわ天が最適解と私に語りかけていた。釜揚げうどんを注文し、天ぷらコーナーで物色していたら、とんでもない長さのかしわ天が視界に入った。「あれが本日の売り場のヌシだな」と確信した。 
 丸亀製麵のみならず、セルフスタイルのお店で食べたいものを漠然と取るのは素人のやり方だ。「売り場で一番デカいブツ」をチョイスするのはこの道を生きる男たちの美学であり、そしてそれを出来てこその玄人だ。かしわ天を食べたいと強く願っている以上、ヌシを選ぶことは私にとって果たさなければならない責務だった。
 
 急いで確保したかったが、前にお客さんが並んでいるのでまだ私のターンではない。先に述べたように丸亀製麵は一方通行。客の流れに身を委ね、自身がかしわ天コーナーの前に進むまで待たねばならない。強引に腕を伸ばして取る事も出来なくはないが、それは著しくマナーに反した行為だ。ジャンクフード喰いは常に謙虚であらねばならない。とりあえず、海老天の中で一番強そうな固体を取る。他のが100とするならば110程度のサイズ感だ。まあまあと言ったところか。
 さて、いつの間にか本日のハイライトとなったかしわ天のヌシなのだが、やつまでの間にお客は3人。まずは一人目がスルー。その姿を見て安堵したのも束の間、二人目のお客さんに確保されてしまった。仕方がない。前日にケンタッキーのオリジナルチキンのバーレルをドカ喰いしてたり、狂気のメニューで押してくる「かつや」系列の「からやま」で総重量1.5㎏の唐揚げが提供される「デカ盛り定食」を食べてチキンに飽き飽きしている状態でもない限り、丸亀に通っている人間があの化け物みたいなサイズを無視出来るはずはない。あと二人分の差で私はヌシにありつけなかった。
 こうなると何故か気持ちが萎えてしまう。「この日は釜揚げうどんと海老天、そしてかしわ天が最適解」とあれだけ猛っていたのに、すっかりかしわ天を取る気が失せてしまった。「2番目じゃダメなんですか?」と聞かれたら、「ダメに決まってるだろう!」とキレ気味に返したくなる心情だ。これはサウナに入った時、自分より先に入ってた人より早く出たら負けと思う気持ちと同じく、理屈では説明できない感情だ。一番デカいやつを他人に取られて、二番目で我慢するほど私は人間が出来ていない。私はかしわ天争奪戦という勝負に負けたのだ。

 しょうがないので、かしわ天を諦めて「玉子天」でも食べようかなと思ったのだが、かしわ天のケースの真正面に立つことで今まで見えなかった奥の方が良く見渡せた。そこには先ほどのヌシを更に凌駕する、極大なかしわ天が鎮座していた。長さは普通だが、厚みが凄い。大き過ぎて禍々しさすら感じる。普通のかしわ天が100としたらヌシは120程度。これでも驚異的なのだが、その裏ボスは135はあろうかという途方もなさだった。こんなものを見つけてしまったらやる事はもう一つ。現行犯逮捕だ。すまない、裏ボスよ。その大きさは罪。その大きさはもう刑法に引っかかっていると言っても過言ではない。

 釜揚げうどんと大ぶりな二個の天ぷら。そのうち一つは規格外の化け物。大満足な昼食だった。こんなエキサイティングでスリリングな経験をさせて頂いたのも「1日」に休みが取れたからだ。いつもなら釜揚げうどんと天ぷら一個が私の基本的注文法なのだが、この日は丸亀製麵が毎月1日にやってる超ド級のお祭りイベント「釜揚げうどん半額デー」だったので、お得になった分で天ぷらをいつもより多く頼んだと言うわけだ。普段は休日と1日が重なった時にしか行けないので久しぶりの半額デーだったのだが、やはり天ぷらが1つ多いだけで満足感は格段に違うと再確認出来た。
 満腹により引き起こされた多幸感に包まれながら、ある考えが頭に浮かんだ。「今日の私は幸運にも釜揚げうどん半額のチャンスにありつけたのだが、このチャンスを全国民に平等に与えるのが本当の政治ではないのか?」ふとそう思い、私の中の民主主義への熱い思いが滾りだした。平等な世の中を実現するため、私自ら先頭に立って戦わねば。

 
 こうして衆院選挑戦の決意は固まった。選挙戦を戦い抜き、勝利をその手に掴むためには政党を立ち上げる必要がある。いつくかの候補があったが、政党名は「認識翼賛会」と決まった。
 それでは、「認識翼賛会」の3大政策を紹介させて頂こう。

①「毎月1日は祝日」・・・誰もが丸亀製麵の釜揚げうどん半額を享受できる世の中へ。政治を志すきっかけとなったこれは我が党の政策の一丁目一番地である。平等、公平な社会を実現するために最優先で達成しなければならない課題だ。

②「毎月29日は祝日」・・・毎月29日を肉の日と銘打ち、キャンペーンやイベントを行うお店は多い。例えばシンプルなサイズアップなら伝説のすた丼の「お値段そのまま肉1.5倍」や、ステーキ宮でのてっぱんステーキを「お値段そのままで40%増量(125g→175g)」だ。値段が一緒なのにお肉が増えるのだから何のデメリットもない神企画だ。
 特別なメニューを提供するパターンではペッパーランチでやってるハンバーグ、ステーキ、牛焼肉がワンプレートになった「肉盛りPEPPER’S」や、バンズに4枚もパティを挟んでるせいで食べる際に顎が外れてしまいそうなロッテリアの「キング絶品チーズバーガー」がある。お値段が少しお高いメニューだが、肉食を極めようと志すなら多少の犠牲はやむを得ない。
 他にもステーキガストのステーキ食べ放題を始め、肉の日の恩恵を受けられるチェーン店は数限りない。そして、肉の日で暴走するのはチェーン店ばかりではない。うちの地元の焼肉屋さんでも29日はカルビが半額だったりする。
「肉好きの肉好きによる、肉好きのための政治」を標榜する我が党としては、「肉」という単語を聞くと無条件にときめいてしまう腕白な支持者の皆様のため、この日も確実に祝日にしておきたいところだ。
 ただ、「肉の日イベントは29日」と思っていたのだが、ロッテリアだと先月は27日~30日、ステーキ宮は27日~29日の期間にわたって肉の日イベントをやっている。仮にロッテリアに合わせて毎月27日~30日を祝日にするなら年間で更に36日も祝日が増えてしまう。そうなると労働者一人当たりの労働時間が極端に減ってしまい、経済が大打撃を受けること必然。しかし、「仕事と肉、どっちが大事なの?」と聞かれれば「肉」と即答する私だし、支持者の皆様も「肉」と即答すると信じている。それに毎月28日はケンタッキーフライドチキンでは「とりの日パック」が販売され、お得な価格でオリジナルチキン4個とチキンナゲットが購入できるので鶏肉愛好家からすれば無視出来ない日だ。
 同志諸君、豊かな食事のために発展途上国に転落するリスクを一緒に背負おうではないか。

③「毎月5のつく日は祝日」・・・ゴーゴーカレーでは毎月5日、15日、25日にトッピングサービス券1枚がもらえる。私も何度かもらった事があるが、生活圏にゴーゴーカレーがなかったせいでいつも期限切れになって悔しい思いをしていた。この苦しみを国民の皆様に味合わせない様、5のつく日も祝日にしたい。
 サービス券を使う際に注意しておきたいことがある。店舗によって値段は違うが、最も価格が高い250円のロースカツ、またはチキンカツを注文しよう。間違っても50円のらっきょうや生たまごを選ぶような、とち狂った真似をしてはいけない。無料のサービスを受ける際や、どれを選んでも支払いが同じ場合は「最も値段が高い選択」をするのが我々プロレタリア階級の矜持だ。よって、カツを食べたくない気分の時でも必ずカツを頼むように。これは約束だ。

 
 現時点で確定している我が党の政策はこのようなものだが、「認識翼賛会」は最も民草の声を聞くことで有名な政党だ。「毎月20日・30日にやってるイオンのお客様感謝デーも祝日にして下さい」なんて意見がくれば真剣に検討しよう。国民の皆様の忌憚なきご意見を聞かせて欲しい。

 ちなみに党首である私が独身なので、第4の政策として「クリスマスイブは全国民強制労働」も検討中だ。もちろん、調子の乗ったカップルが一緒に食事をしたり、イルミネーションを眺めたり、プレゼントを交換したり、ホテルにしけこんでしっぽりよろしくなんて事が出来ない様にだ。クリスマスに浮かれて種馬のようになる奴らは非国民。朝から晩まで馬車馬のように働いて欲しい。
 もしくは暦から12月24日を削除するも選択肢の一つだ。単純削除では諸外国と暦が毎年1日ずつズレるので、12月23日A、12月23日B、12月25日のように暦が進むのはどうだろうか。こうする事で日本からクリスマスイブが消滅する。「日本って12月24日がないんだぜ」外国の方にとってちょっとしたトリビアになるかもしれない。

 こんな事を書きながら「ひょっとしたら12月24日にイベントやってるお店あるかも?」と思って検索してみたら凄いイベントを見つけた。
「餃子の王将は1967年12月24日、京都四条大宮で創業しました」と、俺たちの王将が創業祭を毎年やっているらしいが内容がエグイ。「24日と25日はお会計金額500円毎に250円割引券を1枚プレゼント!!」との事。実質半額ではないか。大盤振る舞いにもほどがある。自民党がたまにやるばら撒き政策がカスに見えるような圧倒的ばら撒き感だ。12月24日、25日こそ最も祝日に相応しいのではなかろうか?
 しかし、社畜時代の自宅最寄り駅近くに王将があったのに何故気付かなかったのだろう?その理由を考えてみたのだが、「きっとクリスマスでみんなが種馬になってる頃、私は社畜らしくクリスマス関係なしで馬車馬のように深夜近くまで働き、帰る頃には王将が閉まっていたのではないか」と思われる。よく頑張ったな、昔の私。
 
 なんにせよ、この事実を知ったせいでクリスマスを排除したい個人としての私と、イブとクリスマスを祝日にして国民の皆様に王将でガッツリ食べて欲しい政治家としての私がせめぎ合っている。思考は袋小路に陥りデッドロック状態だ。いやはや、政治とは難しいものだな。

 さて、政策は提示させて頂いたので、次はそれをどう実現するかだ。まずは我が党の歩むべき綿密なロードマップを作成してみた。

次の衆議院選→議席獲得
次の次の衆議院選→20議席獲得
次の次の次の衆議院選とその前後の参院選→過半数獲得

 この計画を達成するため、我が党は強靭な組織を作り上げなければならない。何だかんだ言って選挙の当落を決める最大の要因は組織票だからだ。党員をガンガン増やし、圧倒的組織票による横綱相撲で政権を奪取したい。

 強い組織づくりのために私が考えたのはこうだ。党員数の増加と党の財政基盤強化を同時に行うため、党員から月額50,000円の党費を徴収しようと思う。月額50,000円を高いと思うか、安いと思うかは収入の多寡があるので人それぞれだろう。だが、私は断言できる。「月額50,000円、めっちゃお得です」と。何故なら、党員が新しい党員を入党させる事で金銭的メリットを得られることが出来るシステムだからだ。簡単に説明するとこうだ。

1.党員になったら月額50,000円を本部に納める。
2.党員は勧誘した新規党員を子党員とすることが出来、子党員の党費の10%が自身の利益となり本部より送金される。
3.子党員が新たに勧誘した党員は孫党員となり、孫党員の党費の10%も自身の利益となり本部より送金される。
4.孫党員以降も同様に新規党員の党費の10%が自身の利益に。

いかがだろうか。子党員を二人勧誘し、その子党員が更に二人ずつ勧誘、そして孫会員も二人ずつ勧誘。そうなれば子会員2名、孫会員4名、孫々会員8名。この段階になれば月額50,000円の党費を払っても本部から月70,000円のキックバックが入ってくるので、いわゆる「寝ててもお金が入ってくる」状態だ。これが令和時代における政党運営の新しいスタイルと私は確信する。
 ただ、ビジネスセンスが鋭い読者様ならお気付きになられたかと思うが、これは加入が早ければ早いほど有利になるシステムだ。我が認識翼賛会の理念に共感して頂いた方は今すぐにでも党員になる事をおすすめしたい。

 このように日本を良くしたいと思う党員の皆様の熱意と、党員になる事で得られるちょっとした実利により、今後、党員は「ネズミ算」的に増え、我が党は日本で最大の党員数を誇る政党になるだろう。そうなれば選挙での勝利は約束されたようなものだ。半額の釜揚げうどん、肉がモリモリの丼やステーキ、トッピングの限りを尽くしたカレーが当たり前になる日も目の前だ。そう、日本の夜明けは近い。 
 
 私が読者の皆様に言いたいのはただ一つ。「乗り遅れるな!このビッグウェーブに!!」それだけだ。読者諸兄の皆様、是非とも我が党の党員となり、新しい時代の波にライドオンして頂きたい。そして次の衆院選の選挙期間中、街頭演説する私と一緒に力強くこう叫んで欲しい。

「認識!認識!認識番号8830に清き一票を!!」

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