閉鎖病棟に入る(1)

いつもは牧師として、自分で車を運転して見舞い訪問へと向かう病院へ、わたしはタクシーで向かっていた。

教会にタクシーが入ってくるのを、わたしは緊張して迎えた。いつものスーツを着ず、スウェットの上下。妻が荷物を持ってくれている。タクシーに乗り込み、車窓の景色を眺める。「わたしが」運転するのではない。タクシーの行く先へ身を任せるしかない。そう、これからしばらくは、すべて他人の判断へと身をゆだねるしかないのだ。いつもは牧師としてスーツを着て見舞いに行っていた病院へ、わたしは患者として入院しに行く。その病棟は、自分では自由に開閉することのできない分厚い扉で仕切られている。

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