【詩】あぶら、半宙に遺る

ここはどの道 帰り道
プレイを連れて帰る道
石と木の根がぬらぬらと
光るあぶらを浮かせている

あぶらよあぶら
半宙はんちゅうに昇ってくる そのあぶらよ

いずこと知らぬ帰り道
プレイを連れて帰る道
喉の奥ではごろごろと
生まれる時を待っている

プレイよプレイ
半宙で胎動する 私のペットよ

ぬ、ぬ、ら、ら、

生まれておいで
私の再生、私のプレイよ


大鷲のように現れた
通り雨のせいか
穏やかに寝そべっていた
木漏れ日は逃げてしまった
そして
大鷲のように現れた
通り雨のせいか
私の疲労は舌を伸ばし
あぶらを舐めたがっていた

タールのようなこの心
背骨を持たぬこの心

煙草をつなげた
おもちゃの蛇だ

かしゃかしゃ とぎこちなく
かしゃかしゃ ととぐろ巻く

(関節!関節!関節!)
此岸しがん、あぶら、彼岸)

あぶらを求めて帰る道
喉の奥からぬらぬらと
別れた舌が伸びている
私はかしゃかしゃ おもちゃの蛇だ

あぶらよあぶら
半宙に昇ってくる そのあぶらよ


ああ
その場所には
鳥の死骸が
幾億も
放られて
熟れて
層になって
あぶらになって
のこっている

大鷲のように現れた
通り雨の粒は
たくさんの鳥の記憶を
身籠っているよう
そして
騒々しく割れる
雨粒の自死のさま
その億の走馬灯を
葉脈に刻むようだった

その場所では
鳥の死骸放られ

獣の死骸放られ

虫の死骸放られ

石や枯れ葉放られ

層にあぶらになって

(関節!関節!関節!)
(此岸、あぶら、彼岸)

ぬ、ぬ、ら、ら


「いつまでもそこでくすぶっていればいい」
薪をくべればすぐに燃え上がる
たくさんの記憶が喉の奥にある
いつかの私の死骸が層になっている

おいでプレイ
君はまた思い出したんだね
君はまた新しく傷ついたんだね

おいでプレイ
生まれたばかりの私のペット
ぬらぬらと体は光っているね

ぬらぁ
ぬらぁ
ひからぁ

ぬらぁ

ひからぁ

関節
此岸と私と彼岸の

《ごらん私の再生、プレイよ
これが私たちのプレイスだよ
ごらん不思議だね、
金色に光ったプールの底に
尾っぽは掴まれて
ほら、半宙を泳いでいる
雨はあがったね、
じきに雨粒の玉はとぐろを巻いて(走馬灯
というんだ)
私たちの葉脈にも潜り込んでくるよ》


ぬらぁ

ひからぁ

ただの灰汁あくかもしれないが
捨て損ないかもしれないが
別れた双子に逢うようだ
双子の匂いを嗅ぐようだ

あぶらよあぶら
半身にとぐろ巻く そのあぶらよ

ここはうろ道 帰り道
いずこと知らぬ帰り道
足の裏から喉の先
鼻腔をくすぐるこの臭み

おいでプレイ
私をいつも新鮮に傷つけ
私をいつも歓ばせるものよ

君はこのあぶらの中で
かえってくっきりと
愛おしく見える 私は
君の耳の裏を嗅ぎたいと思う

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