詩:首都高 間 環状線

御夢(みゆめ)の温床
起き抜けに火曜日の
水溶液を飲み干し

という言葉では始まらない詩をやってみたいと思う。
酩酊のまま仕事にでかけた、という私事を。

枕元のウォッカを一息に飲み
そして仕事に向かう。勤務地は首都高。
首都高、を知らない方はWikipediaを。
それで足りない方は より入り組んだ編集を。

今日もトラックの荷台でバーベルをあげている。
100キロの風に煽られるわたしが
100キロのバーベルを持ち上げるとき、
酩酊した境界のもとにそれは釣り合っている。
熱が身体を帯びる。顎から滴るアルコール汗が、
あなたたちののみものだ。
荷台で酒盛りをする小人たちがいる。
天気は、 雨なら適度に簡素化した編集を。
そしてこのウェイターが、
わたしだ。

痛みを感じる。
ハラスメントはこの場合、非該当とされている。
編集は不可とされている。
この痛みと その怠惰な熱狂が、
あなたたちのおつまみだ。
酒盛り客が私の爪をはがしている。
ポン酢をかけて 粋だね、と言っている。
爪が無くなると指(コリコリしてうまい)
足首(コリコリしてうまい)
膝(コリコリしてうまい)
刻薄な大喜利に沸き立っている。

足が無くなってわたしが浮く平日の平時。
速さと重さの釣り合いが
この逆三角形のオブジェが、
わたしだ。
もうとっくに醒めている。ひと瓶のウォッカは
ずいぶん前に流れ尽くしてしまった。
顎から落ちるのは 首都高の排気に染められた、
ただの汗だ。

小人の酔いが回る。首都高が終わらない。
プラスチックのコップには
ただの汗が注がれている。
平時の酔いは水でも酔える。
急時の酔いも夢では醒める。
肩を組み 歌い始めるイムジン河。
そこに古来よりのイニシエーションがある。
川に編集を。
編集を強いられた酔いも夢では醒めよ。

定時になる。首都高が終わらない。
うっとりとハモるコーラス男に向けて
わたしはバーベルを落とす。仕事を終える。
小人が潰れる音が聞こえる。首都高は終わらない。
血だまりは酔客たちに 五穀豊穣をもたらす郷となる。
釣り合いが取れず わたしは空に放り出される。
東京の街は 瓦礫のほこりと空襲の火の手だ。
街の濃度がわたしに釣り合おうとし、
そして煙が延びゆく環状線に
(みゆめ)の温床

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