詩:熱さに似てゆくとき

僕は、熱いんだったっけ?
それとも、熱さに似ていたんだっけ?
茹だる、色も無く茹だってゆく

プログラムされた破線のようにしか
夜空は星を散らさない
一枚のちり紙が
閉じた箱のなかで、そのときを待っている
ここが何層目なのかも分からない
あわいのせせこましさのなかで
いま、誰かの粗相が引き起こした
こぼれた醤油を拭うために
箱が開くだろう
それからは
少しずつ、短い記憶をつなぐだろう
待ち望むのは
新しいタブをひらく、ような軽い跳躍
誰かの粗相、行き場のない流星
それが醤油であっても灯油であっても
渇いた肌に沁みる、沁みゆく
待つものたちの、静かな膨張が
せせこましく渦を巻くときの摩擦熱、
こよりを巻くときの不感熱によって
茹だる、色も無く茹だってゆく
茹だり、茹だってゆくものに似てゆく

僕たちは、熱いんだったっけ?
それとも、本心から熱くなりかけてしまいそうな、
それほど似はじめそうになっていた、だったっけ?

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