詩:ビール

僕らはテーブルの下で
足を繋がれた童のように
低い低い夜を仰いでいる
ガラスのはじける音が天板を震わせると
ビールの泡が木目を透って落ちてくる
泡の火花はまるで複眼が
ひとつひとつ閉じていくようだ僕らも
言葉を失くすぐらい喉を滝にできれば さ

ここに七色の水鏡
そして七色の水霞の
とおくに顔の無い僧があらわれている
水煙が顔として整おうとしている
滝を昇るいっぴきの魚に
ペンキを剥がれた一艘の小舟が舫っていた
感情線のあらあらしい濁流があり
すべての支流はそこへ還っていくようだ
金色の法衣は首をかかえ
テーブルの上へ還っていくようだ

砂を吹いたような木目をなでると
指先で内樹皮がはじけるようだ僕らも
泡のはじける分だけ軽くなっていく
ビール達と口吸いでも交わしてみる さ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?