詩:一部始終

僕の圧政は
他人の生活と
他人のまた他人たちの生活を
ゴミ袋のなかへと押し込み
暗い箱のなかへ収容もし
ローラーへと流す委任状を出す
すると
圧政者のもとへ
成型したおにぎりがやってくる寸法

僕は幹線道路で魚になり
群れからはぐれないように
注意をはらう
そして珊瑚の繊細な通路では
背びれを気にもし
向かいからやってくる老人や
脇道からの神風のような自転車に
気を向けなければならない
それが
トラックの寸法だ

僕は生活の
生活であっただろう染みに
不要の烙印を押された家具に
ハンマーをおろす
背抜き
袈裟落とし
天割り
いろいろな名前を付けて遊んだ
飛び出した釘が
人差し指の血に
鉄の友情を求める
そこにも確かに寸法があった

僕の倉庫には
他人の生活が
またはもう亡き者の生活だったものが
つぎはぎに
積み上がる
僕の膂力で賄える寸法を
間違えることもある
引き出しに貼られたシールに
手元が狂うこともある

僕の政府は
それほどの生活を取り込みきれない
だから換金という方法に
汗という方法に
しびれや衝動が
それが生活だったものへの
暴力となることを
どうしても許さなくてはならない
定規がいつも正確に測ることが
できるわけもなく
だから
僕は無言でおにぎりを頬張る

右から
左から
背中から
生活の染みがクーデターを起こすとき
汗にまとわりついた無言に向けて
ハンマーを振り落とすしか
ゆき場がない
ちぐはぐなフランケンを
ローラーに流して
ただ夢中で食べるほかない
梅の酸味が舌根をとおり抜ける
一部始終の寸法を
哀悼にいたらない近眼を
僕の圧政は
腑に落としつづけるほかないのだ

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