詩:名前

あなたの名前が無くなったとき

あなたの名前がばら撒かれたとき

たしかに

それを受けとらなくてはならない

あなたの名前をきざむ壁に

指紋を這わせる

あなたのひとつの数を

たしかに数にならせることを

拒まなくてはならない

あなたのあなたたちの人を

誰ひとりとしらないが

ちいさな声で

たしかに

あなたは、きみは、あいつは、ぼくは

拒まなくてはならない

あなたのさいごの囁きが

いきもののかたちをとらなかったとして

それでも

指紋が汗をおしだすときには

反対の指がねぶらなくてはならない

うずを巻くものに

とんぼのように首をかしげて

羽のふるえが撒くものは

羽のふるえの音だけだ

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