詩:カーテンが少し

カーテンの裏で空が遅い
薄暗い午前のあかりが今日はなんだか
もっともっと遅い

病院に行く日だ

夏に乾いた綿も少しずつ水を吸って
ずっしりこおった鉛の卵
指を入れる穴を探している
盲の義手が、なめくじの遅さで
探している

まぶたの裏はあかんぼのように
薄桃色のやわらかいように
ふくらんだり、しぼんだりする
ああ、脂で黒ずんだメッキだ
今日は病院に行く日だ
対峙する日だ

帝王切開の傷をなでるように
そこから少しずつ、もっと遅く割るように
なめくじの停止で開いていく
黒ぼったい黄身が漏れるように
やわらかいものに交わるように
もっともっと遅く
もぉっともぉっと遅く

今日は病院に行く日だ
黄色いトロッコに乗って
三週間分の石炭をもらいに行く
トロッコのなか少し傾むくと
空がほんのり見える


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