詩:おばあさんに雪が降る

おばあさんは毛布をかけてあげたかった

庭に雪が積もっている
まだまだ降りそうな夜だ
長男の長男がひとり佇んでいる
雪に冷たく傷ついている
マントでくるむように
毛布をかけてあげたかった
無性の愛の表象は
こころの裏に貼り付いて
爪が届かないシールとなって
いつしか鏡を見るように
両手に毛布を持っていた

おばあさんは毛布をかけてあげたかった

けれど
長男の長男はひらりと身をかわし
なかなか捕まらなかった
雪が肩に積もりはじめていた
おばあさんの部屋着にも
あまり丈夫でない頭にも
雪が積もりはじめていた
鉢植えに毛布が引っかかり
こころの端っこを掴まれたような
少しの重みに心がとられた一瞬で
長男の長男を見失った

おばあさんは毛布をかけてあげたかった

けれど
長男も
長男の嫁も
長男の長男も
長男の長男の弟も
部屋の中でこたつに入っていた
ずっと窓も障子も閉めて
おばあさんの肩に
あまり丈夫でない頭に
雪が積もっていくのを知らなかった
倒れた鉢の脇腹に
ほどなく雪が積もっていった

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