そして近づいてくる

某詩誌で落選した詩です。良かったら読んでいただけると嬉しいです。
後半は少しだけ画像のものから改稿しました。

地図のめくれた場所から
近づいてくる人がいて
いつもこぼしている
服はだいたいシミだらけで
口元にケチャップが付いていて
かんできたのだと
乾いてきたのだと
やがて結石のように生えるだろう街には
イワシのぶら下がる電線
逆光のさかり場
そんな場所から近づいてくる人がいて

支流でいっぱいになるように
深いシミを作っている
「あんたは消えたがり屋だね
 そして 増えたがり屋だ
ケチャップをまたこぼし
「新しい川が見つかったね
 あんたの胸を源流にしようか」
水面に顔は希釈されて 近づいてくる

堤防を溢れてしまいそうなかたちは
わたしたちの
いつもいちばんのかたち
ずっと一緒のお友達
まだまだもっとも
仲良し どうぞ
傷つけ合わせてください
印刷部屋には
たくさんの栄養で
耳のどんどん大きなわたしが
力のない川を掘りつづける

映りこんだ雲も川むこうには行かない
蝉が降り ほんのりと泡が立っていた
シミのほとりをなぞる
まぶたの無い生きものが
モリオンの表面張力を
舐めては揮発する そして
その分だけ地面から独立していた
「いちばんのかたちは?」
口元に薄羽が付いていて
渇いている
「いちばんのかたちは?」
そして近づいてくる
もっともっと希釈していく

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