詩:キコリン

あなたを隠してしまった

キコリンの弟だよ
あなたのおさがりの
まっかなランドセルは
ほとんど新品だった
黒いペンキでぬりつぶして
二年をすごした

保健室はそのまま遠くの同じ保健室につながっていたから
いつもどきどきした
あなたは天然のぐるぐるを気にして
やけどするほどのコテでむしっていたけど
おとうさんに引きづられて
よけいにぐるぐるになってしまった
ちいさいあなたの似顔絵を
ぼくも同じにかいた

血から隠れて
血を隠していた
ペンキのはがれから
錆がのぞいている
ぼくが無邪気に放るのをみていた
黒い放物線は
赤い放物線になる
赤い放物線は
黒いうずまきの似顔絵になる

ペンキのためにまだ風化がおきれない
つみあがった瓦礫の下で平たくなったものを
灰のなかの灰のなかからでも
あなたの目は
見つけるんだろうね
帰巣本能のように
見据えてるんだろうね

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