観劇メモ:月組『LOVE AND ALL THAT JAZZ』

風間柚乃さん主演のバウ公演『LOVE AND ALL THAT JAZZ』を配信で見た、感想。あるいは、歌うまとお芝居について。

先日の雪組新人公演配信といい、本来だったら見られないものが見られるのは本当にありがたい。ということで、仕事で頭ちょびっと欠けつつも、自宅で配信にて観劇致が叶いました。という駄文を書いて、上げ忘れていたので出します。


感想。

「なんか、凄かった」(雑)
唐突感・急展開は否めないし、なのにそれすらも歌力と表現力でウワーーーーーッと前へ前へと連れていかれるので、気づけば一幕が終わっているし、二幕始まるぞー、と思った直後には終演していた。そして「なんか、すごかった」という感想に至りました。

歌うま。
ミュージカルにおいては、そのうまさがお芝居としての表現力に繋がっていてほしい。ピッチや音程が取れて声量があればミュージカルができる、ということではないよなぁ、と思うので。

音程もピッチも不安定に聞こえたとて、ビブラートや歌唱法に癖があったとて、それさえも表現に繋がって聞こえれば構わない。美輪明宏さんの紅白の「ヨイトマケの唄」を思い出しながら、しみじみと思う。

その点において、月組さんはお芝居がうまく、お芝居としての歌が上手い人が本当に多いなぁとしみじみ思います(この後に見た『川霧の橋』の配信でも改めて思いました)。あふれ出た心情が歌となり、その感情を言葉以上に可視化させて見ている側へと伝えてくる、という歌が私は好きで、そういう歌を月組さんに行けば聞けるな、という印象を持ちました。歌を単体で聴いても、場面やその感情が想起されるような歌っていいですよねぇ。

で、本作。お芝居の地の部分が説明不足に感じるというか、歌がまずあり、そのブリッジとしてのお芝居、みたいだったなぁ、と感じました。歌のために場面が作られている。最たるものが、風間さんが一人で立つ6分超のシーン。一人で、舞台が広く感じさせることもなく圧倒させる歌は本当に素晴らしかったのですが、後場面への転換の唐突感に、え、これは雪原でひとり死んだ彼が見ている夢なのかい……?と思ってしまうなど。

それなのに、圧倒的によくわからないのに、感情の奔流に巻き込まれ、ドドドと気づけば海(終演)へ流れついていた感じ。ルーカスが何を考えているのか、セリフでは心に残らない。それなのになんかわかった気にさせられる、という力技の不思議体験を味わった気分です。

彼らが生きた時間軸で、こんなにも他人のためになにかをできる余裕があるひとたちが市井にそんなにもいたのだろうか。「映像の世紀」リマスター版放送で最近見たばかりの、あの時代の空気感を思いだす。舞台の世界に、あそこまでの悲壮感は覚えず、だからこそおとぎ話のようだった。

誰かのために優しさを発揮する作中の人たちは、その一方で優しさの犠牲になるだろう人について無頓着な様子だったのもおとぎ話感。そこまでして守りたい、助けたいと思うほどの何かがこれまでにあったのだと思わせるには、もうちょい説明が足りなかったかな、などと思う。

でも、そういった冷静に分析批判しようとする脳をストップするように、歌声にのせた圧倒的な優しさに包まれて流されていきました。るーかすはやさしいひとなんだよ?それは疑うすき間なんてないし、世界は時に厳しくもあるけれど、美しいものなのだよ??他人にやさしくできた子は、最後は当然救われるんだよ???以上!

配信を見ている最中、仕事で見られていなかった友人から「働いてる?」との質問が投げかけられました。僕らはマノンという作品が大好きで、「働いたら負け」な主人公かどうか、というのを気にしがちなので。で、「働いてるよ」と当初答えてはみたものの、収容所では働かないんだよなぁルーカス……。なんか、なんもしてない。ピアニストだから手を守りたい、とか、なんかいろんな理由があるのかもしれないけど、でも、そういう辺りが掘り下げきれない。要素が提示されない。

説明が足りてない、と思うのだけれど(個人の感想だし、集中して見ていたら必要十分なのかもしれない)、感覚的にはなんとなく咀嚼できる。ミュージカルは歌も表現の大きな要素だから、その歌が説得力があるなら、作品としては穴がない!みたいな論理に最後はたどり着きました。ということで、なんかよくわかんないこともたくさんあったけれど、凄かったし面白かった!!


「風間柚乃さんときよら羽龍さんは、なんとも歌がうまいなぁ~。おっ、あの人も、あの人も歌がうまい」と思っているうちに舞台が終わってしまっており、感想を書こうと思ったら、中身をペロッと忘れておりました。結果的に「歌うまってなんだろね、わからんけど月組さんの歌は好きです」ということしか書けなかったのですが、まぁ、いいや。