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絶好調な人への謝罪_100日後にZINEをつくる、87日目

『最近いいことしか起きなくて、何でもうまくいく気しかしないんですよ!』

電話越しに言われ、耳の穴から他人のポジティブパワーが全身に侵入してくる。

「そのフラグたてると、このあと後悔するからやめときなって」
「その状態からどんな流れですっ転ぶのか見たい」

誰かの幸せを目の当たりにしたときにこそ、人間性が顔をだす。

『最近毎日このチャンネル観てて。観ると絶対元気になると思うから、ぜひ観てください!』

ポジティブパワーのお裾分けくらい人をしんどくさせるものはない。いや、しんどくなるのはわたしだけなのかもしれない。「絶好調な人」の盲目さ加減に具合が悪くなる。自分が元気になるものは、他人のことも元気にさせるであろうと当然のように考える、その浅はかさ。

無邪気にポジティブな声を聞いていると、顔面に生クリームを皿ごと押しつけられている気分になるわたしは、なんて性格が歪んでるんだろう。

そんなこと考えていたらだめだめ。わたしの方が年上だし、相手の善意までひねくれて拒否する人間なんてロクな死に方しないな、と反省。素直におすすめされた動画を観る。

内容は以下の通り。

YouTubeに生息する有象無象のカリスマ経営コンサルである男性が、経営難に陥っている相談者の店舗へおもむき叱咤激励する。
喝を入れられて初心を思い出した相談者は号泣、LTVという単語を連呼していたカリスマも号泣、「絶対!大丈夫だから!」と熱くハグして帰る。

マジかよ。・・・これ以上言語化したらわたしは確実に地獄に堕ちる。湧き上がってくる感想は、言葉になる前に飲み込もう。

カリスマのパッションもすごいけど、やっぱこれを他人に猛プッシュできる彼女はタダもんじゃない。

自分のパッションを号泣するくらい有り難がってもらえるカリスマって前世は何者だったんだろうと思いを馳せながら、チャンネル内の他の動画をスクロール。

すると、「お手上げ」「激怒」というサムネイルが目に入る。大好物の予感に引き寄せられて動画を再生。

わたしと同年代であろう相談者女性が、カリスマの説教をキョトンとした顔で聞いていた。彼女は自分に都合の悪いことは無視し、短絡的で楽観的なことをぺらぺら語る。
ヒートアップするカリスマ。
パッションが徐々にマジ切れに傾いていくカリスマ。
ついにお手上げして言う、『だれか代わって!!』

面白い。
号泣動画の100倍面白い。

よく見ればこの動画に限らず、ちょいちょいサムネイルに「(カリスマ)ブチギレ」の文字が。今まで何千人もの経営者相手に指導してきたカリスマの神経を逆なでし、感情を高ぶらせ、見ているものを圧倒するモンスター経営者!あっぱれ!

感情に振り回されるカリスマの人間らしさと、「経営難で相談者側」であるにも関わらずどこまでも厚かましく振舞える人間の底力を見た。
元気でた。

動画を勧めてくれた彼女に言いたい。
「あなたがわたしが元気にさせられるはずがない」と決めつけたりしてごめんね。
彼女の絶好調がこの先も続くことを祈る。

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