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ミザリー②_100日後にZINEをつくる、23日目

中断してたミザリーの続き。

ポールをかいがいしく看病しながらも、徐々に不穏なアニーが見え隠れしはじめる。彼女自ら「癇癪」と呼ぶそれが起きると、相手を怒鳴りつけ、打ちのめすまで止まらない。
ポールから何かを訂正されたり反対意見を聞くと表情が一変し、我を忘れて怒りをあらわにする。
こわい!つよい!一瞬で着火してあっという間に沸点に達するアニーの怒りを目の当たりにすると、大の大人であるポールも目をまんまるくして萎縮する。

その激情は、自分が購入した最新刊でミザリーが死んだことを知って頂点に達する。

あんたが殺したくせに!
お前が殺したんだよ!
お前が殺したんだ!
あたしのミザリーを!

『ミザリー』:ミザリーの死を知ったアニーは寝ているポールをたたき起こして怒りをぶつける


ポールの複雑骨折した両足をガタガタいわせて気持ちを落ち着けたアニーは、彼にタイプライターと紙を与え、続編を書いてミザリーを生き返らせるように命じる。
内容につじつまが合わない部分を見つければ、ダメ出しして書き直しをさせる。世界が自分の信じる法則から外れることを、彼女は決して受け入れない。

映画ではポールの感情が語られることはなく、彼の心境は表情や行動から察するしかない。
売れっ子作家はすぐに彼女の求めるミザリーを把握し、続きが気になって仕方ない展開を繰り広げて機嫌をとる。

その合間になんとか脱出を試みようとし、アニーのいない間に家の中を車椅子で探検。アルバムを発見する。
それを見て、ポールはアニーが今まで何人もの人間を殺してきたことに気づき震えあがる。金字の筆記体で「Memory Lane(懐かしい想い出)」とかかれた真っ赤なアルバムの不気味さよ!

彼がこっそり部屋から出ていたことに気づいたアニーは、「まだ働けるけど、逃げ出せない状態にする」足つぶしの刑を実行!
両足の間に木を挟んで、ハンマーで足首横をごーん!
てこの原理で足首がごきっと折れる。痛い!見てて痛い!

しかし、状況はアニーの家に保安官が訪ねてきたことで一変。
ポールを見つけた保安官を猟銃で撃ち殺したアニーは、2人で心中するしかないと決心する。

ポールはアニーの目の前で、書き上げたミザリーの続編の原稿に火をつけて燃やす。
やらなきゃやられると腹をくくったポールは、下半身が動かないまま銃を持ってるアニーに素手で挑む。
タイプライターを彼女の頭に叩きつけ、指で目をつぶそうとし、原稿を燃やした灰を口に押し込む。
でもアニーは強い。
血まみれになっても何度も立ち上がりたたかう。不死身!
ようやっと、ポールは玄関にあった鉄製のブタの置物でアニーにとどめを刺すことができた。

怒りの女王、アニー。
死んだら心は安らかになっただろうか。


おそらくアニーはパーソナリティ障害、もしくは双極性障害を抱えてる。
気分の浮き沈み、怒りの衝動が抑えられない、ゆがんだ認知、たまに解離しているかような表情。

この映画の一番怖いところは、アニーの狂気がおばけや悪魔のせいではないってこと。
特有の精神の傾向をもつ人間が、怒りや悲しみ、孤独感や承認欲求なんかを身体の中で熟成発酵して生きれば、こんな怪物が出来上がる。

自分のことを「癇癪のせいで人に好かれない」と話していたアニーが救われる道は、どこにもなかったのか。

強くて怒りんぼうでロマンチックで人に好かれたいのに上手くコミュニケーションできないアニーは、たぶんわたしの中にも住んでる。



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