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読書感想文「校閲記者も迷う日本語表現」

「正しい表現をびっしり説明している本だったら読みにくいだろうな…」と心配していましたが、大変読みやすかったです。
校閲記者じゃなくても、普通に読み物として面白かったし発見もありました。

内容の一部をご紹介します。
・「固定概念」は使えるか?
という質問が見出しにあり、それに対して回答の選択肢とどれだけの人がその回答を選んだかが書いてあります。
・「使える〇%、おかしいとは思うが意味は通じる△%、おかしいので使うべきでない▢%」」といった感じです。
その後に解説が続きます。
他にも「熱視線は定着したか」や「おざなりとなおざりの差」といった見出しもありました。
では本書で私が気に入ったところを3つご紹介しますね。



がれき

この話は第1章の震災に関することの一部として書かれています。

震災の記事で被災者から「思い出のある家や物に対して、がれきという言葉を使わないでほしい」と言われたらどうしますか?

と、この話を書いた人が面接で聞かれたエピソードが書かれてありました。
ハッとしましたね。
そんな視点が私になかったからです。
この話を書いた方は「読者の側に立って想像を巡らすことも校閲の仕事」と書いています。
同感です。
表現が正しい・間違っていることも大事ですが、読者の気持ちに寄り添うことを忘れてはいけないと感じました。


かたさ

実はつい最近私自身が悩んだのが「かたさ」です。
「固さ」「硬さ」「堅さ」
どれを使うのがいいの?と悩みました。
この使い分けでポイントになるのが「対義語」です。
固い⇔ゆるい
硬い⇔やわらかい
堅い⇔もろい

確かにこれだとわかりやすいです。
しかし一般的には「固い」を使っておいて、ほぼ問題はないのだとか。
ただしものすごくかたい場合は「硬い」を使うほうがいいみたいです。
深く考えすぎてもダメ、かと言ってテキトーに使うのもちょっと…。
言葉って奥深いですね。


闘う

内容はコロナ下の言葉ということで、ウイルス相手には「戦い」より「闘い」が好まれるというお話でした。
私が驚いたのは、校閲のお話ではない部分です。
「闘う」の部首は「もんがまえ」に見えますよね?
元は「たたかいがまえ」という部首なんだそうです。
そんな「かまえ」があったのか!と声が出ました。
ちなみにたたかいがまえは「鬥」と書きます。
門の上のほうが日ではなく「王」になっています。
たたかいがまえは「二人が手をあげて相手の髪をつかみ合って格闘する形」を表しているそうです。
ということは「王」に見える部分は「手と髪」なんでしょうか?
私はときどき本編以外のお話に反応してしまいます…。


感 想

私は校閲記者ではなく、極細々と副業でWebライターをやっている身です。
私のクライアントさんは個人なので、そこまで厳密な言葉の使い方は要求されていません。
しかし言葉を使う者として、読んで損はない本です。
辞書的に使うより、何度も読み返すほうが「言葉に対しての取り組み方」が身に付くような気がしました。
当たり前が変わることで言葉も変化していき、言葉は再定義されていくのだそうです。
「言葉は相対的なもの」と書かれており、言葉は生き物なのだと感じました。
常に「これでいいのか」という気持ちを持ち続けたいです。

校閲記者も迷う日本語表現
毎日新聞校閲センター著
毎日新聞出版

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