見出し画像

読書感想文「夕暮れも とぼけて見れば 朝まだき」ノッポさん自伝

「夕暮れも とぼけて見れば 朝まだき」ノッポさん自伝
高見のっぽ 著
岩波書店

ある一定以上の年齢の方なら誰もが知っている「できるかな」のノッポさんの自伝です。
まるでノッポさんが目の前でお話をしてくれている感じがしました。
楽しそうに軽妙に、幼少からのお話をしてくれているのです。
苦労話にすることもできたと思います。
でもノッポさんは常に明るく、面白く語っています。

この本の中で印象に残ったのが次のお話です。
82歳になったノッポさんが、蕎麦屋で夕飯を食べていたときのこと。
二人のご婦人から「ノッポさんですよね?」と声をかけられる。
それにうなづくと二人のご婦人は「握手してくださーい」と言った。
ノッポさんは「握手じゃおもしろくない。イイコ、イイコしてあげるから頭を出しなさい」と50ウン歳のご婦人たちの頭をなでた。

この話だけでノッポさんのお人柄がわかりますね。
そしてこんなノッポさんだからこそ、多くの人に愛されたのでしょうね。
私も「イイコ、イイコ」されたかったなぁ…。

文章としては少々わかりにくさもありますが、それもご愛敬。
ノッポさんの自伝を、ライター的視点で読むのは野暮ってもんですよ。
ノッポさんの昔語りを聞く、それだけでいいじゃないですか!
そんな気持ちにさせてくれる本でした。

タイトルの「夕暮れも とぼけて見れば 朝まだき」の意味について
某新聞社の人物紹介欄「夕暮れも又楽し」に登場せてほしいと依頼があったことがきっかけだと書かれてありました。
「夕暮れ=年老いている」
何も念押ししなくてもいいじゃないか!
ノッポさんのちょっとした反抗心があったみたいですね。
そして「朝まだき=まだまだやれる」って奮起している気持ちが表れています。

ノッポさんの声が聞こえてくるような本です。
肩ひじ張らずに読めるので、心が疲れている方にぜひオススメです。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?