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オペラ座の怪人が好きすぎてヤバい。

あーーーーーーーー本当に好き
好きな人の名前すら愛おしくなる感じと同じで『phantom of the opera』って題名すら愛おしい。

4Kデジタルリマスターって本当に素晴らしいですよね
『さらば我が愛』も4Kで観られて本当に感謝してる。この時代に生まれたからこその特権だと感じる。正しい文明の使い方だと思うこれが。武器とか戦争でなく、文化やその物語をより繊細に映し出せる。本当に素晴らしい。

4K褒めはさておき、ファントム。
もう本当に100回は観てるんですよ、毎回泣きどころは違うんだけど。
以下ではラブネバの話はしません。ラブネバありきで解釈している人とは違う解釈になっていると思うのでよろしくお願いします。


・masqueradeと"Anywhere you go, let me go too."の話

初めて観た時は多分とにかく音楽に惚れて、特にmasqueradeとか。多分普通の人より舞台とかミュージカル観てると思うけどわたしが触れてきた中でmasqueradeより素晴らしい音楽を未だ聴いたことがない。

本当にすごい。masquerade/仮面舞踏会という題材はもちろん、オペラ座に巣食う闇の部分と光の部分の入れ替わり、その狂気をここまで綺麗に人間が表現できるんだ、って毎回新鮮に感動する。表面では貴族が仮面をしながら踊り狂い、舞台裏では庶民が仮面をせずに踊る。まさにオペラ座全盛の輝き。平家物語でいうなら平清盛が太政大臣になった時の感じ。放たれる光が眩すぎてその後の衰退とか、オペラ座の闇の部分もより深くなるその表し方がマジで天才。ALWに足向けて寝れない。
しかも題材が仮面舞踏会。どこまで惚れさせるんだよ。


(後に歌詞の話として追記しますが)わたしが一番好きなのが、そんなmasqueradeを経て“The point of No return”の最後の最後に"Anywhere you go, let me go too."って言うんですよ、ファントムが。ここが本当に好き。
今までファントムはクリスティーヌに「私とともにいろ」と命令し続けるんですよね。そこはラウルとの対比になってるんですけど。これはラウルが初めてクリスティーヌとキスしたシーンで歌う歌詞で。
ラウルは"All I Ask of You"でもわかる通り"Anywhere you go, let me go too"って言い続ける。君さえいればいい、君がいるところに着いていく、ってスタンス。けどファントムはオペラ座に縛り付けられてる影響でオペラ座の外に出るという考えがそもそもでない。からこそずっと"come to me,angel"ってわたしの元にいろ、わたしと一緒に地獄を過ごしてくれ、ってスタンスなんですよね。この対比が本当に本当に好きなわけなんですが。

そんな中、雪が降りしきるオペラ座の屋上でラウルとクリスティーヌのキスを見てしまうわけですね。本当にこいつらは北風と太陽。そしてmasqueradeで「素顔を隠せ」と歌った後にファントムが"Anywhere you go, let me go too"って言うんですよ。これはクリスティーヌを手に入れるためにラウルのやり方を擬態したとも読み取れるし、ファントムがクリスティーヌに触れて変わった契機とも読み取れる。わたしはどちらでもいいなと思ってる。ファントムが好きな人を手に入れるために、一時でも、それが嘘でも、自分のエゴを捨ててオペラ座を捨てようとする光への一歩を踏み出そうとしたことに変わりはないし、そこがどうしようもなく愛おしいと思うわけですよ。
そんなファントムの変化に多少気付いて仮面を引き剥がすわけですが… まあ地下に入った瞬間に「ともに地獄を過ごそう」とか言い始めるわけですね 本当に愛情表現が下手くそ。まあ色々あり、最終的にはラウルへの愛を手に入れられないと察して自ら手を引くわけですが、

って言うかそこも本当に好き。
「ラウルを殺したくないならわたしと過ごすと誓え、そうでないならコイツを殺す」ってマジでどっちを選んでも自分の首を絞めてて苦しい。 ファントムと過ごすと誓ったらそれこそラウルへの永遠の愛を誓うと言うことであり、誓わなくてもラウルを殺してでもあなたとは過ごさないという意思表明であり、本当にさあ…………
その前に言われたセリフもめちゃくちゃキツイよね。
「あなたの顔は一度見たら忘れられないけどもう怖くはない。本当に歪んでいるのはあなたの魂だと分かったから」ってさ…………しかもその後に「かつてあなたの悲しい未来を憂いて流した涙はもはや憎しみになってしまった」って言われるんですよ、もう……はあ…………

・エリックの孤独の話

で、ここがわたしが多分オペラ座の怪人に囚われ続けてるこの作品の主題だと思ってるところなんですよ‼️
ファントムは多分どこかでずっと分かってるんですよね、自分の魂こそが歪んでるってことを。でもおそらく幼少期のことも含めて、愛されないのは顔のせいだって自分を納得させ続けてきた。でもこれってファントムだけじゃなくて私にも、誰にでもある気持ちだと思うんだよ。愛されないのはしんどいし、それに自覚的になるのも、ましてやそれが自分の魂が歪んでいるせいだなんて思いたくないし思えないでしょ、普通。ファントムが自分の顔のせいにし続けるのは彼なりの自分を守る方法だったんだなって思う。し、私もそういう自分の守り方をどこかでしているのだろうなとも思う。孤独に耐えられなかった彼が唯一得た自分の守り方が「顔のせいにすること」だったんだなと思うとわたしは彼のことを哀れだとも愚かだとも思えない。そんな物悲しさがブーメランになって突き刺さってくる。本当に、ね、いい作品だよ

最後それこそ本物の愛を見せつけられて、でもキスしたシーンのファントムはマジで幸せそうで、苦しそうで。そこのカメラの画角も素晴らしいよね。キスした瞬間は爛れてない方を映してカメラがぐるっと回って爛れた顔でキスするファントムを映すあの演出!!!本当ににくい!!!素晴らしい。

あ、あと私がオペラ座の怪人ALW版で何よりも好きで好きで仕方がないのは“I love you”としっかりした言葉をラウルとファントムが1回しか言わないこと。これがめっっっちゃ好き。映画としても、作品としても、物語としても粋だよね。センスが良すぎる。ラウルは屋上で言うよね。ファントムが愛していると言えないのは愛し方を知らないというそのものの表現にもなるし、愛しているとすら言えないその寂しさに何度だって私が恋をする。キスして"愛"を知ったファントムが初めて愛している、と涙ながらに弱々しい声で伝えるシーンはもう、圧巻です。
「愛している」と明確な伝えることを安く捉えていないALWの演出の賜物ですね。

そんで最後の最後にシンバルを叩く猿のおもちゃを一人で眺めるシーンですね。ここは泣かなかったことがないです。ガチで。生まれて初めてのキスをして、愛し方を初めて知って今まで自己中心的にクリスティーヌを手に入れようとするだけだった彼が初めてクリスティーヌのためだけの愛を選びとるシーン。

もう本当に素晴らしいです。見世物小屋で一人猿の人形を眺めるだけだったときと変わらない孤独を抱え、でも心をむき出しにした今回はその姿が痛々しくて涙が止まらなくなる。そして薬指に強引に嵌めた指輪を返されるという、もうなんかこれ書いてるだけで泣けてくる。好きなものは無理やり手に入ればいいと思っていたファントムが初めて人の心は、愛されるということは無理矢理手に入れられるものではないのだと気づくんですよね。歌声があまりに弱々しくてもう誰も彼を傷つけないでくれ……となる。あの瞬間、私が船乗って駆けつけたくなる(実際にエリックみたいな男いたらマジで嫌いだろうけど爆笑)
でもマダムジリーがずっとファントムを気にかけていたように、誰にも愛されていないわけではなかったんだよね、ただそれに自覚的になれなかっただけで。それを思うと本当に苦しい。

そしてラストシーン、墓場のバラ(指輪付き)に繋がるわけですが、ここの演出も本当に本当に、ああ、彼は生涯を通してその愛を貫き通したのかっていうこの切なさ。そしてその二人の一見理解できない心の繋がりにラウルは手を出すことすらできなかったのだという暗黙のマウント。まーーーーじでよく出来てる、1919年と1870年を行き来していた物語がただの一点において集結する。本当に物語の作り方が上手すぎてなにもいうことがないです。

・歌詞の対比の話 solitude(6/29追記)

映画十回を記念して歌詞の話でも追記しようかと。
オペラ座、ALWなだけあってやっぱりなんといっても、何度言っても飽き足らないくらいに音楽が、良い。
特に本当に好きな歌詞の話をさせてください。
"All I ask of you"を起点として対比される歌詞の数々ですね。特に好きなのを抜粋します。
ラ→ラウル フ→ファントム

ラ:let daylight dry your tears
フ:turn your face from the garish light of day

ラ:anywhere you go let me go too
フ:come to me angel of music

ラ:let me, lead you from your solitude
フ:lead me, save me from my solitude

ここに書ききれないくらいにはもっともっと対比はされてるわけですが、特にここで語りたいのが最後のsolitudeの話。ここ、えぐない?マジのマジのまじで。solitude、つまり孤独ですね。
ラウルは「君を君の孤独から救い出したい」ファントムは「この孤独から私を助け出してくれ」この対比がね、すんごいのよ。
しかも先述した通り、この後に”anywhere you go let me go too"が来るんですね。以下です、訳文は私作成なので甘めに見てください。

・ラウルの歌詞
Then say you'll share with me one love, one lifetime
Let me lead you from your solitude
Say you need me with you here, beside you
Anywhere you go, let me go too
Christine, that's all I ask of you
一つの愛を、人生を僕と分け合うと言ってくれ。
君を君自身の孤独から救い出したい。
だから僕が必要だと言って。君のそばにいる
君が行くところについていくから、
クリスティーヌ、ただ君に望むこと。

・ファントムの歌詞
Say you'll share with me one love, one lifetime
Lead me, save me from my solitude
Say you want me with you, here beside you
Anywhere you go let me go too
Christine, that's all I ask of ...
一つの愛を、人生を僕と分け合うと言ってくれ。
僕を僕自身の孤独から救い出してくれ。
君のそばにいるから僕が必要だと言って
君の行くところについていくから、
クリスティーヌ、ただ君に……

はあーーーーーー????????狂うが?????????????
勝利のドンファンであんなに情熱的に歌っていたのに、急にAll i ask of youのメロディーになって本音のように溢したのが「孤独から掬いあげてくれ」って、もう本当に…… どれだけファントムがクリスティーヌに救われ、ある意味で傾倒していたかが窺える。
また、ある意味で二人は孤独の共鳴者だったわけで。きっと君なら分かってくれるだろう、みたいな気持ちがあったと思うんだよね。だからこそこの後に「暗闇に戻ろう。この世の苦しみは永遠に続く。」みたいな歌詞があるわけで。
ラウルのlet daylight dry your tearsにも通じるが、ラウルにとって暗闇は忌むべきものだけどファントムにとっては拠り所でもあってその違いもまた苦しい。 2人の孤独へのスタンスが、苦しい。
Lead me, save me from my solitudeって本音をこぼした後にクリスティーヌに振られ「仮面舞踏会」を歌うファントム……
孤独から救い出してもらえずに「仮面をかぶろう」と歌うのはさすがに反則。自分自身を曝け出した結果に待っていたのも孤独だったなんて現実があまりにしんどすぎる。このシーンが終わると、私自身「人から愛されるためにはどうしたらいいんだろう」って考えざるを得なくて苦しくなる。でも、それでもたった一つの愛を信じて生を全うしたファントムの強さに私は憧れるし、そういう意味でファントムは真に強かったのだなと思う。

・おわりに

つい先日、クリスティーヌとエリック、ラウルの感情について炎上していましたが、ガチのガチで野暮すぎる。この関係性に正解なんてないし、というか本人たちすら名前をつけてないものをただの立会人である私たちが決めていいはずなんてない。エリックとクリスティーヌは肉欲とかそういうのじゃないもっと違うところ(もしかしたらそれは孤独と言い換えられるかもしれないけれど)で共鳴して、結びついて、そんな関係に名前をつけて固定するというのは本当にセンスがない。野暮。大きなお世話。無駄だしつまらない行為だよ。本当に。それをどう解釈するかは人それぞれで良いし、ましてや押し付けるなんてそんなこと少なくともオペラ座ではしないでほしい。

長々と語りましたが、実が私が一番好きなのはイェストン/コピット版(宝塚版)のファントムなんですよ(え?) 2004年の和央ようかさん、2006年の春野寿美礼さん、2011年の蘭寿とむさん、2018年の望海風斗さんの全てを観てますが、やっぱり2006年の春野寿美礼さん主演は正直言って格が違いますよね(和央さんや藍寿さん、望海さんの他の舞台ももちろん観たことありますが、格が違うというのはオペラ座に限っての話です。全員めちゃくちゃ良い俳優さんです)
春野さんの、アダルトチルドレンファントムの表現、マジでエグい。純粋に育っているからこそ、純粋に愛を信じていられていて、なおかつそこから生まれる外への敵意とのギャップの演じ方がもう言葉には尽くせないほどに好きです。

東宝版やブロードウェイ版、ケンヒル版も含めてファントムを語らせたら正直24時間じゃ足りないくらいに喋り続けるので、今回は4Kに帰ってきたALW版の『オペラ座の怪人』に対する感想で止めておきます。長々とお付き合い、ありがとうございました!


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