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【詩】ハンドクリーム・コール

 ハンドクリームが話しかけてきました
「今日は随分と冷えているね
 それに随分と乾燥しているよ
 さては皿洗いを頑張ったんだろう?」

 しんしんと月が照らすカーテンの隙間
 そっと覗き込みながら私は応えました
「その通り 今日は賑やかな食卓で
 嬉しくて料理をたくさん作ったんだ
 みんな美味しいって言ってくれたんだよ」

 ハンドクリームは頷きます
「そうだったんだね おめでとう
 ボクの贈り物として手をエスコートするね」
 いかにもジェントルマンの輝きを放ちます

 でも私は その手で揉みまわしました
 まるでゴマをする商人のように
「そんな風にしてもらっていいの?
 私からは何も返せないのに」

 ハンドクリームは笑っていました
 笑い声が 手の中から溢れ出るようでした
「ボクの最高の役目を遠慮しないでね
 むしろ最高の気分なんだから
 これからはボクは次へ進むんだ」

 しばらく無言でゴマを擦っていました
 私とハンドクリームは笑っていました


 やがて一人になった私は眺めました
 さっきよりも艶やかで幸せを叫ぶ手を

 汗か涙か 湿り気を失った目元を細め
 重なっていた手を そっと離す
 そして明日のために足を踏み出す
 疲れたときには また彼にコールしよう




年明け1弾の詩に相応しいかは、もはや分からなくなってしまいましたが、先程ハンドクリームをもみもみしながら思いついたので、投稿しました!

トップ画像はTAKANOSHIRAISHIさんからお借りしました。美しい手先の画像をありがとうございます!


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