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【物語詩】織姫と彦星の364日間

 やれやれ やっとこの日が来た
 今宵は七夕 年に一度のワシの休日
 ワシが誰だと? ……ワシじゃよわし
 天帝と織姫様と彦星殿の連絡係をしておる


 ワシの仕事は主に手紙の配達
 日暮れを合図に天帝の元を飛び立って
 まずは織姫様に天帝の文を届け
 次に彦星殿に届けて 夜明けに戻る

 織姫様と彦星殿は遠距離の夫婦だ
 共に暮らしていると 愛が激し過ぎて
 仕事が疎かになってしまうから
 離れて暮らすように命を受けている

 おかげでワシは大忙し!

 この夫婦 表向きは静かだが
 ワシの前ではけたたましい猿みたいだ
 毎度毎度 愛しい人に文を届けろと
 こっそりと しっかりと押し付けてくる

 余りにもしつこいから受けているが
 いかんせん 遠距離過ぎて
 間に合わなくて持ち帰ることもしばしば
 たぶん普通に天帝にもバレている

 でも……そこは責めないんじゃなぁ……

 なんだかんだ天帝も甘やかしている
 おかげでワシの忙しさは変わらず
 来る日も来る日も文をあちこちに届け
 おかげで最強の翼を鍛えることができた

 織姫様の飼う鶏から尊敬の眼差しを注がれ
 彦星殿のもつ牛からはモゥモゥと鳴かれ
 すっかり有名な鷲となってしまった
 ……何も嬉しくはないぞ


 そんな日々を送るワシだが
 今宵だけは飛ばなくてもいいのだ
 なぜなら今夜は七夕節
 世話のかかる2人の逢瀬の日

 好きなだけ笑い合っていなさい
 ワシは遠くからそっと想っている
 ……様子を見るために結局は飛んだな
 まあいいか 天帝も傍にいるしな

 ところで いつ同居なさるのですか天帝?




あとがき

 2年前にも七夕で詩を書いていました。

 私にとって織姫と彦星って、こんな感じ。
 笑いあり、涙ありのお笑い系バカップル夫婦。
 もしや、今日が暑かったの、この2人のせいでは?(笑)

 そもそも2人とも、自らのお務めを真面目にしていたら、年に一度しか会わせないなんて天帝からのお叱りを受けることはなかったでしょうに……。まぁ、お互いに一途な愛を貫けるのは素敵なことですね。

 今夜は晴れていたし、ちゃんと会えているのかな?
 どうか幸せな夜を過ごしてね~。


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