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【詩】ハナウタバコ

 憧れの先生は隠れスモーカー
 休憩時間はいつもの窓際 こっそりと
 パープル・スモークをくゆらせている

 彼の様になっている気怠さに手招きされ
 私はついつい飛んで火にいるお邪魔虫さん
 五月蠅と呼ばれないよう こっそりと

 私たちの間を通る言葉はない
 お互いを近づけるほどの引力もない
 ただ つかず離れずの煙がモヤモヤする

 苦い香りが大人っぽい気分にさせるだけで
 幸せに酔いしれる私は甘ったれた子ども
 そんな現実から逃避したくて つい鼻歌

 煙草に合わせて 先生の吐息に合わせて
 フゥフゥと 昭和のアイドル曲みたいに


 やがて紫色の炎は潰えて
 煙草は吸い殻へと姿を変える
 憧れの仕草で片付けた先生は 私を見た

 アイドルのような華やかな微笑み
 私の心に種を撒き 煙のように立ち去った


 その笑みが 会釈の代わりだったのか
 煙草が美味しくて嬉しかったのか
 鼻歌がおかしくて笑ってしまったのかは
 きっと吸い殻にしかわからないんだろう

 私は開かないパンドラに頭を抱え
 窓を開けられないもどかしさに悶え
 心の中で育つ芽を観察している

 そのうち それは 蕾を付けるだろう
 薄いパープルの 柔らかい蕾を
 きっと先生に似て こっそりと咲く
 苦い香りを放つ花なんだろう



読み返して思います……これはこれで物語詩と言えるのかな。
普通の詩ってどんなんだったっけ(笑)。

週末は別で物語詩を投稿予定で~す。

タイトルは「ハナウタ・タバコ」を略したダジャレっぽいネーミングだったのですが、「ハナウタ・バコ(箱)」でも。「ハナ・ウタ・バコ」でもいけるかなと後で思いました。お好きなようにどうぞ~。

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