2019.10.06 Praha
2019年秋、私は「タトラカー」と呼ばれる旧型路面電車の姿を求め、人生2度目の渡欧をした。タトラカーとは当時のチェコスロバキアのタトラ社が大量製造した車両で、現在でも丸っこいT3と、角っぽいT6のおおまかに2種類が東欧を中心に活躍を続けている。特にチェコは製造国とあってその勇姿をいたるところで見ることができる国だ。成田からドバイを経由し、ウィーンに着陸後、国鉄に揺られて4時間。チェコの首都プラハに到着した。
ホテルを出るやいなや勝利を確信する、そんな青空だった。まだ太陽の姿こそ見えないものの、この天気なら朝のみ順光のプラハ城バックに行くしかない。定番構図ではあるが、来たからには抑えたい。背景の城が工事中なのはご愛嬌だが、太陽を一身に受ける夢にまで見たタトラが目の前を通っていった。
そのまま城東部の坂、通称Malostranskáの坂に移動した。多くの系統通るため撮影効率はすこぶる良いが、どの車両にとってもこの坂は難所のようだ。車に抜かされながらもタトラは進む。
プラハ随一の観光名所だと勝手に思っている、ガントレットレール。基本的には複線のプラハトラムだが、ここは建物の中を通るため、単複線=ガントレットになっている。離合待ちだけでなくパンタグラフの高さの変化も好きなポイント。もう少し日が登ってからの方が影は少なかったかな。
本物の観光地Legion Bridge。川を渡るタトラもまた優雅。23系統は観光系統扱いになっていて、系統番号標示をした赤いタトラが確実に運用に入ってくれるのはありがたい限り。だが、この先で平面交差する17系統も良いロケーションが多いものの、ほとんど低床車運用で泣く泣くスルー。
午後になり空は少し曇り始める中、地下鉄でPalmovka駅に降りてみた。プラハ北東部でいろんな系統に乗り換えられそうなエリアである。まずは近場で撮ってから、少し高台にある公園から街を撮り下ろす。さらに歩いてやってきたのは国鉄の跨線橋。路面電車らしからぬ設備とプラハ郊外を背景に切り取ることができる。陸橋の南側、Krejcárek電停も高低差を感じる撮影地となりそうだったが未履修……。
夕方、最後に狙ったのは市街を背負った専用軌道を行くタトラ。12系統は本数こそ少なくないものの、運用は低床車が半分ほど。数枚のタトラカットを稼ぎつつ、1時間粘った最後の1枚。最高の幸運に体が震えた。
プラハはトラムに限らず美しく、何度訪れても飽きのこない街である。その街を彩る一種の装置が、プラハが故郷であるタトラT3とも言える。街とともに写すことで、T3の魅力も最大限引き出せると私は思う。