バルト三国のひとつ、ラトビア。その首都が港町リガである。旧市街が世界遺産にも登録されている美しい街並みは、歩くだけで心が躍る。この都市でもトラムは市民生活の重要な足になっている。前日夜、リガ国際空港に降り立った私はリガ中央駅前のホテルに到着。翌朝、カメラを片手に歩き始めた。
リガ市電には、T3とT6(リガではT3Mと表記)の2種の旧型車が活躍している。集電器がポールという他都市にはない特徴に加え、T3の一部車は系統番号の幕表示という姿を今でも保っている。魅力あふれる青い車体は街に繰り出すとすぐに出会うことができた。
国立劇場までやってきた。石畳と建築、そして自然が折り混ざる美しい街だ。ひっきりなしに発着する市電は多くの市民の重要な足となっている。
いわゆる旧市街からダウガヴァ川を渡ると、トラムは大きな公園の中を走る区間がある。訪れた10月は北欧でも紅葉の季節のようで、木々は黄色くなり始めていた。紅葉の木の下に敷かれた芝生の上の青いタトラ。緑豊かな街の一コマだ。
午後になり日が差し始めた。向かったのは市内の南東部。旧共産圏を思わせる集合住宅が多く見られる地区のようだ。この区間は3系統と7系統にはT6が多く、10系統はT3が多い運用のようで、新型低床車はほとんど走らない、タトラ狙いにとっては天国のような場所だった。
秋、北欧の昼は短い。西日を背にリガ中央駅近くの市場まで戻ってきた。市電路線網の中心とあって行き着くまもなくトラムはやってくる。車内も座れないほどの市民が乗っている。街の交通を支え続けるタトラの姿を切り取ることができた。
鉄道という面で言えば、ラトビア国鉄やリガ市電はバルト三国の中で最も近代化が遅れていると思う。だからこそ、鉄道風景を求めるのであれば今行くべき国のひとつなのではなかろうか。行って損はしない。そんな美しい都市だった。