2022.11.13〜15 České dráhy①
2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。一報を聞いて膝から崩れ落ちたオタクがここにいる。キーウ、そしてハルキウのトラムを撮るべく旅行を企図していたからである。コロナ禍で海外に行けなくなり早3年。行かない理由を探すのは簡単だが、行けないばかりに取り返しのつかないことになってしまうと学んでしまった。
さすがにウクライナには行けないが、海外旅行を躊躇する時間などない。水際対策の緩和を確認し、11月11日夜に日本を出国、12日昼過ぎにチェコ・プラハに到着した。
プラハには2018年と2019年の二度訪れている。いずれもプラハ市内のトラム撮影が目的だったが、今回はトラムに加えてチェコ鉄道=České dráhy、日本でいえばJR線の撮影にチャレンジすることにした。国際免許を取得してレンタカーを借り出し、夜明け前から向かったのは210号線のアーチ橋。霧がかっていて満点の天気ではないが、斜面を直登し気動車を待ち構える。現れたのは814形気動車。狙いの車両ではないが、チェコ鉄道らしいカラーリングにテンションは上がっていった。
東に1時間ほど車を走らせ、212号線沿いのSázavaという街にやってきた。川に沿って走る線路を、トンネルの真上から撮り下ろすことができるスポット。石北の「白滝発祥の地」感がある。まずはプラハ側を向き、1日1本のプラハ始発の快速を狙う。客車牽引と聞いていたが現れたのは814形気動車。まあ仕方ない。続いて反対から来た普通列車は810形といういわゆるレールバス。これは狙っていた車両だったのでニンマリ。霧がかる天気ではあるが満足である。
この日のメインディッシュは202号線。プラハの南80kmほどの街TáborからBechyněを結ぶローカル線である。この202号線はチェコ鉄道電化区間では珍しい直流1500V。私鉄買収線のような経緯によるものらしく、日本でいう仙石線みたいな存在だろうか。その都合でここだけの機関車が走っているという。さらに終点のBechyněには、道路と線路の共用橋もあると聞けば行かずにはいられない。霧も晴れてバリ晴れのロケーションに胸高鳴り、見た光景が写真の通りである。世界って広いね。
よく見ると、機関車が引いているのは810形気動車みたいな車両。おそらく客車改造されているとは思うが、2軸の車両を凸型機関車が引っ張る光景は実に牧歌的で素晴らしい。追いかけながら助手席から撮ったあとは、丘陵地帯を駆ける列車をパシャリ。天気も最高でとても映える。大枚はたいて来てよかった。
再び共用橋に戻ってきた。なかなか日本では見られない光景である。併用軌道上は20km/hの制限があり、機関車はゆっくりと進む。この構造が現代にも残る理由は知らないが、ここに来ないと見られない鉄道原風景がある事実。目の前にある現実。この上ないワクワクが私を包んだ。
朝も撮った210号線。土日だけは一部列車が客車代走されるという噂があり、前日のロケハンでその一部列車のスジを確かめていた。良さげなロケーションの駅へと急いで向かい、ぬかるんだ道に堪えながら撮影地へ。待つこと10分、日の入りギリギリの低い光線に照らされて、青く特徴的な機関車と客車がファインダーに飛び込む。背景の街並みと相まって、異国情緒がいい具合に出てくれた。