『てづくり推しぬいBOOK』これまでのこととこれからのこと


いわゆる「推しぬい」の作り方の本を出してから4ヶ月くらい経ちました。

おかげさまで手芸の本としてはなかなかの売れ行きで、すでに何回も増刷を重ね、想像していたよりずっと多くの方に手に取ってもらえているようです。


実際にこの本の型紙で日々沢山のぬいぐるみが誕生しているのをSNSを通して見ることができるのが本当に嬉しくて、この時代に手芸の本を出せてよかったと実感しています。
それぞれに忙しい暮らしの中で「推しぬい」作りに挑戦してみてくれた方々の、手を動かしたその時間が楽しいものであったなら嬉しいです(そしてできればそのまま手芸沼の住民になってほしい!)

この本で作り方を紹介しているぬいぐるみはコロンとしていて一見簡単そうに見えますが、ちゃんとそれらしく作ろうと思うと案外ややこしい部分もあります。だけど出来るだけ誰も挫折させないように、作りたいと思ってくれた人をちゃんと完成に導けるように、手順のひとつひとつに頭をひねってなんとか分かりやすく説明しようと苦心してできた本です。
編集のOさんが私のワガママにどこまでもどこまでも付き合ってくださったおかげで私の実力以上のいい本に仕上がったと思っているのですが、でも、まだまだ難しく感じさせてしまう部分はあるかもしれません。それでもどうにか解読してぬいぐるみを完成させてくださった方々の知恵と熱意に救われるような気持ちでいます。

※質問を多くいただいた箇所についてはこちらの記事でも補足しています。



今回は、出版からしばらく経って少しずつ『推しぬいBOOK』と「ぬいぐるみの生地やさん」のことを知ってくださる方が増えてきた中で、よく聞かれることをなんとなく書いておこうかなと思ってこの記事を書いています。ついでに別に聞かれてないけどお話ししたいことも。


■何してる人なんですか?

家族で営んでいる小さな刺繍工房(アパレルや衣装などの機械刺繍のサンプル製作や小口量産を請け負う工房)の仕事をしつつ、細々とぬいぐるみパタンナーとして玩具やキャラクターグッズのメーカーさんからお仕事を頂いたりしてきました。ぬいぐるみの試作と量産用の型紙を作る、フィギュアで言うところの原型師みたいな仕事です。何でも作れます!とはまだ到底言えないですが、結構いろいろなぬいぐるみの型を作ってきました。
今の働き方になる前は玩具メーカーでぬいぐるみやキャラクターグッズの企画デザイナーをしていました。

■『推しぬいBOOK』を出した理由、魂胆は何?

死ぬまでに1冊は手芸の本を書きたいと漠然と思っていたのですが、ふと「いわゆる『ぬい』の本だったら書けそうだし今なら需要がありそうだな」と思ったので企画書を作って出版社に勝手に送りつけたのがきっかけで出版させて頂けることになりました。ラッキーですね。
何が目的なのかは自分でも正確には分っていない部分もあるのですが、手芸の本とか説明書が好きなのでそれを作りたかったということと、手芸は最高なのでもっと沢山の方(特に若い世代の方)に興味を持ってもらえたらいいな、と思ったりはしています。

■生地を売るために本まで書くなんて商魂たくましいですね!

そう思ってもらってもいいですし、そうだったらかっこいいような気もするんですが、逆なんです。
本を出せることが決まったときに、この本で紹介するぬいぐるみはぜひソフトボア生地やナイレックス生地で作ってもらいたい!と思ったものの、その時点では国内でこれらの生地(特に人型ぬいにちょうどいい色の)を手に入れやすい状況にはありませんでした。
材料が手に入らないなら本を出してもあまり意味がなくなってしまうので、本の発売までに生地の販売店を作っておくことにしました。それで立ち上げたのが「ぬいぐるみの生地やさん」です。

『推しぬいBOOK』のぬいぐるみを作るのに他のお店の生地を使うのを止めるつもりは元々全くありません。好きな材料で好きなように楽しんでもらえたらいいなと思っています。(生地の種類によって向き不向きはあります。詳しくはこちらもご覧ください)

もちろん「ぬいぐるみの生地やさん」で買って頂けるのはすっっっっっごくありがたいです!
発送も特別早いわけではないですし、爆安でもないかもしれないけれど、ここで買えば間違いないと思ってもらえるお店になれるよう、真面目に続けていきたいと思っています。(課題が山積みですが……)

■なぜ型紙を商用利用OKにしたのか

作ることだけでなく作品を販売することも手芸の楽しみの一つだと思っていて、それも含めて楽しんでもらえたらいいなと思ったからです。
販売するとなるともっと美しく速く縫えるようになりたい!という気持ちが湧いてきたりすると思うのですが、そこれこそが物作りの醍醐味だと常々感じています。(もちろん一点一点手間を惜しまず丁寧に作る物作りも素敵なのですが、どちらかというと「量産」にフェチを見出す方なので)

また、私自身、以前体調を崩して外で働くのが難しくなってしまった時期にお人形の服を縫って販売することでわずかながら収入を得ていたことがあります。
さまざまな事情から外で働けない状況にある人が社会と繋がりを持ったり収入を得たりするきっかけになるかも、というのも密かに期待した部分です。(別にそこに使命を感じたりはしていませんが、もしそんなことがあったらちょっと嬉しいな!という程度に)

■「ぬいのお顔セミオーダー刺繍|コネコトリコの刺繍工房」のこと

最近、こんなサービスを始めました。

このサービスは「ぬいぐるみの生地やさん」の内部の人ではなく、外部委託の職人さん(コネコトリコさん)との取り組みです。
いわゆる「ぬい」を作ろうと思ったときにまずハードルになるお顔の刺繍。そこのハードルを下げられたらいいなと思って自社でぬいのお顔用の刺繍ワッペンを作ったりもしてきたのですが、レディメイドのワッペンで対応できる範囲には限界があるな〜と思っていました。
そんなタイミングで、詳しい経緯は省きますが『推しぬいBOOK』がきっかけでコネコトリコさんと出会うことが出来ました。

こういうサービスって「あったら良さそうだな」「需要あるかも」と思う人はきっと沢山いると思うのですが、実際に始めようとすると案外骨が折れるものだったりします。結構な熱量がないとそれなりの形に持っていけないので、私と同じかそれ以上の情熱をもって一緒にサービスを作ってくれる人と出会えたことがすごく嬉しいです。

コネコトリコさんデザインの豊富なバリエーションの中から選ぶことができて、糸の色指定やパーツ変更などのオプションも充実しているので、かなり自由度が高いです。絵心がなくても、刺繍が苦手でも、かわいいお顔のぬいぐるみを作れます。
また、お顔の刺繍の難しさのひとつに「実際に縫ってわたを詰めて立体になった時に顔のパーツの位置がイメージ通りにいかないことがある」というのがあるのですが、この刺繍サービスでは『推しぬいBOOK』の型紙にバッチリ合うようにパーツ配置を調整しているので安心して作って頂けるかと思います。

手刺繍の繊細な風合いももちろん良いものですが、機械刺繍には機械刺繍の端正な美しさ、量産品っぽいソリッドな魅力があります。いわゆる「ぬい」においてはあえての量産品ぽっさが魅力になったりもしますよね。そういう感じがお好きな方に楽しんでいただけたら嬉しいです。

まだ立ち上げたばかりで対応できる件数が少なめなので最初は抽選倍率が高くなってしまいそうですが、受付から納品までの流れに慣れてきたらもう少し販売数も増やせるかと思いますので、気長にお待ちくださいませ。

■オカダヤさんで当店の商品の一部を扱って頂けるようになりました

現在、オカダヤさんの新宿本店と町田店さんで「ぬいスケルトン」(ぬいぐるみ用の骨格パーツ)を販売していただいています。
オカダヤさんが発売前から『推しぬいBOOK』を推してくださっていることをTwitterで知っていそいそとご挨拶に伺ったことがきっかけで、お取引して頂けることになりました。やった〜!
オカダヤさんの売り場はこんな感じです。手芸用品が恐ろしいほど何でも揃う。
オカダヤさんは私にとって地球上で一番好きな場所のひとつなので感慨深いものがあります。
売り場には店員さん達のお手製のぬいも展示してくださっていますし、ぬいぐるみ向きの生地の品揃えは実店舗の手芸店さんの中では日本一なのではないかと思うので、行ったことのない方は是非足を運んでみてください〜

■個人事業主から法人になりました

個人事業主として家族だけで10年ほどやってきた刺繍工房「ボクトウ刺繍」を、「ぬいぐるみの生地やさん」で発送業務などを担当してもらう社員やパートさんに安心して働いてもらえるように法人化しました。普段の仕事には特に変化はないのですが。
社名は「ボクトウシシュー合同会社」にしました。今までの屋号だと刺繍という字の画数が多くて、会社の備品やら菓子折りやらを買った際に店員さんに領収書をお願いするたびに「画数多くて申し訳ない!!」という気持ちがあったので、いい機会だし画数を減らしてみました。よかったよかった。

■『てづくり推しぬいBOOK』と「ぬいぐるみの生地やさん」これからの展開

まだ発表できる段階にないものが多いですが、いろんな計画が進行中です。
(なんか書きたいと思ったけどまだびっくりするほど何も言えなかった!!!早く言いたいこといっぱいあるのに…)

無鉄砲な割に豆腐メンタルなので本が話題になったことでモヤッとしたり落ち込んだりする出来事もあった中、一緒に楽しいものを作りましょう!と真正面から声を掛けてくださった方々のおかげで前を向いて元気でいられている気がします。わーい。

それから、ダウンロード型紙は時間を見つけて少しずつ充実させていきたいです…
なんかバタバタしているとあっという間に1日が終わっちゃう。(それはみんなそう)

(近いうちにセーターの編み図を無償配布しようかなと思っていたりします)
(ハロウィーン向けのかわいい〜〜〜のの型紙も用意していて、そっちはもうすぐ出せそう!)

「ぬいぐるみの生地やさん」ではこれから年末にかけて少しずつ、新しいタイプの生地を出していきます。かわいい生地なので、かわいいもの作って楽しんでほしいです〜。早く商品画像の撮影しないと…。


という感じで、今のところ言いたいことはそんな感じでした。
なんとなくTwitterではなるべく喋りすぎないようにしているんですけど、ここならいいかな、ということで。また何か喋りたくなったら書きます。


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