3/17の日記：代わりというよりむしろマイナス

　今日はなんだか調子が悪かった。体のほうはすこぶる健康なのだけど、心の方がいつも通りじゃなかった。気持ちが沈んでいるというわけではなくて、心の中が忙しくなっている。たぶんだけど、思っていることをそのまま真っすぐに伝える手段を断っているからだと思う。そんな状態の中で歯医者へ行ったら、2年経っても全く上達しない歯科衛生士さんに苛立ったり、私もこんなふうに見えていたのかなと落ち込んだり、いつ痛くされやしないかとヒヤヒヤしたり、担当の先生がいつもの好きな先生じゃなかったり、診察券を思い切り机に叩きつけられてビックリしたりした。だから、本当は診察後30分は飲食をしてはいけないのだけど、数年ぶりにスタバでフラペチーノを頼んで思い切り女子みたいなことをしてしまった。それでも心の中のザワザワは取れなくて、帰り道にふと「このままだとヤバいから、髪を染めよう」と思った。
　髪を染めて外見が変われば、気持ちも変わることができるかもしれない。それによく考えてみると、もう春なのに、こんなに真っ黒のままでいるのはおかしい気がしてきた。早速ドンキへ寄って、ブリーチ剤を2個カゴに入れた。つぎにピンクとか黄色とか水色とか、春らしい色のヘアマニキュアをぽいぽいとカゴに入れていたのだけど、そのあとレジに行くのを躊躇してしまった。「外に出ないのに、色を変えて何になるんだ」とか「プリンになったらめんどいぞ」とか、当たり前のことを考えてしまって、動けなくなってしまった。それで、30ふんくらい、ヘアカラー売り場をウロウロして迷った結果、やっぱり染めるのを止めることにした。
　すごくショックだった。たぶん今までの私なら絶対に迷わずレジへと向かっていたはずなのに、どうしてか、私は普通の人が考えるようなことを考えてしまい、結局行動できなかった。さようなら私のアイデンティティ。
　すごく悔しくて悲しくて、何か別のことをしてやろうと思った。いっそのこと、黒髪を保つ選択をしたのだから徹底的にやってやると思って、ヘアケア用品をじっくり見てたけど、よくわからなかったので買わなかった。それなら垢抜けメイクで勝負だと思ってお化粧品を色々見たのに欲しいものは何にもなかった。肌ケア用品も、今のところは特に必要としていない。毎日すっぴんでたくさん睡眠を取っていれば、お肌の悩みは大体解決する。
　そもそもまずは買うものを探すことからだったので、おんなじところをグルグル回って、いろんな商品をカゴに入れたり戻したりしていた。そしたら、店員さんたちが何度も私の周りをウロウロし始めたので、これはヤバいと思ってそそくさと逃げた。ビン底眼鏡に黒ずくめの女が化粧品売り場に居座っていたら、そりゃ怪しまれるよな。

　結局買ってきたやつはこれ。

　本当にもう何なんだ……。

　ああ考えが次々と溢れて止まらない。口から出せないので喉につかえて窒息しそう。どうしてか今日は、もう会わないであろう人のことばかり思い出してしまうし。今は春なのに、初めて一緒に過ごしたクリスマスが何度も浮かんでくる。真冬なのに裸足に草履、趣味の悪い服で待ち合わせ場所に来て、私たちには場違いなデパートでブレスレットを買ってくれた。あの時遠慮して安いものを選んだけれど、ネックレスにしておけば、もっとたくさん身に着けていたのかな。もう着けないので早く売りたいけど、どうせ値段もつかないだろうからどこかに放っておいてる。