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【エッセイ】Give me myself.

 わたしの身体がわたしのものじゃない感覚。
 わたしの身体がまるで操り人形みたいな感覚。
 わたしの身体がロボットのような感覚。

 いつからかそんなことを感じていた。

 人と会話するとき、口がまわる。思っていること思っていないことをつらつら並び立てる。
 口から零れた言葉は戻せないのはわかっているけど、あることないこと口が滑る。

 わたしの口が信じられない。わたしの言葉の筈なのにわたしの本心とは思えない。
 わたしの心と口がリンクしていない。頭では何も考えられていないのに口はよく回る。思ってもいないことを並べ立てて、組み立てて話している。わたしはわたしの口にした言葉を詭弁だと思っている。

 わたしは頭の中だけでは考えられない。いつも口に出して、または手を動かして何を考えているのか整理する。異様なほどの独り言はこれが原因。
 街を歩く中、例えば新作メニューの看板を見つければ美味しそうと口に出して言う。
 ポケットが震えればツイッターの通知かなと口に出して言う。
 小説のネタになりそうなことを見つけたら手を動かす。そのとき声に出して文字を打つ。

 頭の中が整理できないからわたしの意見がわからない。
 友達とYouTubeに関しての会議をしたとき、以前の発言と大きく違っていたと友達に指摘された。
 失敗したと思った。発言を促されたとき、いつも取り繕って姑息な発言をする。
 いつもその場その場で口に任せていて、わたしの言葉をわたしで呑み込めず、わたしの意見を強く持てない。何事にもその場その場で意見を作るから状況次第で180度意見ががらりと変わる。
 友人との会議でその悪い癖が露見して非常にまずいと思った。

 今こうして不思議な感覚がするのもアイデンティティがないからだと思う。
 家族の前でのわたし、友人の前でのわたし、先輩の前でのわたし、後輩の前でのわたし、先生の前でのわたし、上司の前でのわたし、ネット上でのわたし。
 すべてに一貫性を持てないわたしはわたし自身がわからない。
 だからこそ、わたしはわたしの身体なのにどこか操っているかのような、人形を動かしているだけのような感覚がしてしまうんだと思う。

 わたしはわたしがほしい。
 ぶれまくる心の軸をどうにか文字に起こして心に刻み付けて押さえつけているけど、何もしていなかったらわたしは何が好きで何が嫌で何がしたいかというのがわからなかったと思う。
 今こうして文字で打っているのも心に刻み付けて記憶するため。形に残さないと絶対に忘れちゃうから。

 あと丁度2か月で20歳というのに全然人間になれていない。まだわたしは人形のまま。

 誰かわたしに魂を吹き込んで。

   Give me myself.



※この作品は奴衣くるみの心の中をフィクションも交えて書きました。

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