掌の上の秋～あれから一年

手を差し出したらとまってきた。普通、指の先だけど掌の上に。多分、秋の終わりで弱っていたのだと思う。赤トンボは「アキアカネ」と言ったと思うけど、秋はつかまえどころがない。「秋なのに暑いね」か「もう寒いね」が多くて。秋を名前にもらったこいつは、居場所に困っていたのかも知れない。あれから一年、こちらはまだ生きているけれど、アキアカネは多分もういない。秋を一度しか生きられない命と、何度も感じられるけど、その時間の経過を忘れてしまう命と、どちらが「濃い」のかな、どっちも命か…。