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8時15分以降の『虎に翼』・5月

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『虎に翼』感想文のまとめ、5月分です。
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虎に翼 第44話・第45話

虎に翼 第44話・第45話

先週の予告で、寅子(伊藤沙莉)が作ったお守り袋を拾い上げた人は、やはり優三さん(仲野太賀)ではなく、戦病死を確かに伝えに来てくれた帰還兵だった。戦友というわけではない、ただ隣のベッドに寝ていただけの人に
寅子が作った「五黄の寅の力が宿ったお守り」を渡してしまう。帰還兵の彼の言うように、どこまでも優しい人。
それが、まさに彼……優三さんが亡くなってしまったのだと裏付ける。
なんという苦しさだろう。

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虎に翼 第43話

虎に翼 第43話

岡部たかしじゃなかったら許されんだろ、こんなの。岡部たかしでもギリギリだ!という回だった。彼以外だと、これができるのは大泉洋くらいしか思いつかない。

優三(仲野太賀)の死亡告知書を隠していただけではない、直言(岡部たかし)から出てくる出てくる、「それを言っちゃあおしまいよ」懺悔のオンパレード。

①優三くんのこと隠していてごめん
②今、トラに倒れられたら我が家は立ち行かなくなると思って。ごめん

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虎に翼 第42話

虎に翼 第42話

寅子(伊藤沙莉)と直明(三山凌輝)がマッチのラベル貼りと箱詰めの仕事。なんでもやって生きていかねばならないのは当然だけれど、優秀な若者が進学を諦めて勤しむのがこれか……という思いが強くなる。

年が明けても優三(仲野太賀)は帰ってこず。

「寅ちゃん。もっと優三さんの話をしてもいいのよ。写真も飾っていいの。すぐにこう言ってあげられなくてごめんね」

ああ。花江ちゃん(森田望智)……ずっと胸を痛めて

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虎に翼 第41話

虎に翼 第41話

3月の東京大空襲。よね(土居志央梨)とマスター(平山祐介)は逃げられたのか、カフェー燈台の外で空を見上げていた路上生活者は。
花江ちゃん(森田望智)のご両親は亡くなってしまった。結婚前のお食事会や結婚式の場面を思い出し、胸塞がる思いであるが、猪爪家に追い打ちをかけるように直道(上川周作)の戦死公報が届く。

花江ちゃん(森田望智)の顔をまともに見ることができない直言(岡部たかし)の心中、察するに余

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虎に翼 第40話

虎に翼 第40話

前回のラストで寅子(伊藤沙莉)を訪ねてきた人物。
この重苦しい週の金曜日に、寅子になんらかの救いをもたらしてくれるのか!?と思ったら、法科女子部の後輩・小泉さん(福室莉音)が女子部の閉鎖と、高等試験中止の報を伝えにきてくれた。

……救いじゃなかった……むしろ、寅子が切り拓いてきた女性法曹の道が閉ざされたという、更に打ちのめされる展開。寅子が出産育児で立ち止まっても、誰かが後に続いてくれるという願

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虎に翼 第39話

虎に翼 第39話

えっ、辞表!?産休・育休じゃないの…?と思った瞬間、今更ながら気がついた。

登場人物の誰もが、何もかも初めて経験することだったのだ。

仕事を抱えた身で妊娠することも、そんな女性を雇うことも、そうした女性から相談を受けることも。女性が働きながら出産育児するための社会システムは整っておらず、子どもは母親が自分の手で育てるものだという考えが大勢を占める世の中。保育園すらない。

「弁護士の資格は持っ

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虎に翼 第38話

虎に翼 第38話

山本五十六の国葬を報じるラジオ番組が流れている、昭和18年6月5日。
直道(上川周作)に赤紙が来た。花江(森田望智)が台所で涙したことは一切なかったかのように、出征のお祝い膳はイワシの蒲焼、紅白なます、田楽、つみれ汁(こちらも人参と白葱?大根?で紅白か)にビールとお酒。
一人分の量、内容ともに慎ましやかに見えるが、直言(岡部たかし)と直道の「こんなご馳走は久しぶりだな」「お母さん、無理したんじゃな

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虎に翼 第37話

虎に翼 第37話

寅子(伊藤沙莉)と優三さん(仲野太賀)の夫婦が並んで座り、ちいさなピクニック。自分のハンカチを広げて、そこに寅子を座らせる優三さん。
ああ、この紳士としての仕草。昭和の白黒映画や「サザエさん」の原作漫画などで見た……!

「すべてが正しい人間はいないから」「この世にみんな、いい面と悪い面があって。守りたいものがそれぞれ違うというか。だから法律があると思うんだよね」

家族みんなの分には足りない鳥肉

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虎に翼 第36話

虎に翼 第36話

その危機感については、第8話の感想 でも少し触れていた。寅子(伊藤沙莉)が初めて傍聴した、物品引渡請求裁判。DV夫から母の形見の品などを取り返したい妻が起こしたものだった。いかにも暴力を振るいそうな憎々し気な様子の夫と、地味で華奢で、助けたくなる様子の妻。見た目で判断してはいけない、事実のみで考えねばと観ていたのだ。そして、妻の勝訴に快哉を叫ぶ女学生たちに、いずれどこかで「弱く見える女性」にひっく

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虎に翼 第34話・35話

虎に翼 第34話・35話

寅子(伊藤沙莉)の背負ったものの重さ、夢、将来のために彼女にプロポーズせず、佐賀で奈津子(古畑奈和)と婚約したのだと告白する花岡(岩田剛典)。彼を呼び出して問い詰めるのが、轟(戸塚純貴)と、よね(土居志央梨)であるのがよい。

轟「それで猪爪に何も言わずに婚約を!?きちんと話もせずにか!」
そうだ、そうだ。どういった答えを寅子が出すにせよ、きちんと話すべきだったんだよ。

よね「責任を負う勇気がな

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虎に翼 第33話

虎に翼 第33話

冒頭、昭和15年9月。日独伊三国同盟が成ったことが、ラジオと新聞で示される。日本の立場としては、既に日中戦争で消耗しており更に中華民国を支援する米・英と対立するなか、独・伊と手を結んで米・英を牽制しつつ日中戦争を有利に運ぶ意図があった。何度も繰り返し描写されているが、日本は既に戦争真っただ中である。そしてまだ太平洋戦争は始まっていない。

32話では「御時世柄 品数を減らしてをります」の貼り紙をし

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虎に翼 第32話

虎に翼 第32話

本人は平静なのに、本人以上に家族が異性に「きゃー!」と盛り上がる。この図は見たことある…『カーネーション』の糸子(尾野真千子)と、母・千代(麻生祐未)だ。
花江ちゃん(森田望智)と、はるさん(石田ゆり子)がふたりでアシストして寅子(伊藤沙莉)の気持ちを少しずつ揚げてゆく。

雲野事務所の事務員・常磐さん(ぼくもとさきこ)が読む雑誌に、厚生省が制定した『結婚十訓』が並んでいる。

一、父兄長上の指導

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虎に翼 第31話

虎に翼 第31話

弁護士編スタート。と、同時に優三(仲野太賀)が猪爪家を出てゆく。
……あれ。なんでしょう。この喪失感は。猪爪家の家族同然、優しくて頼もしい優三が寅子(伊藤沙莉)たちの傍からいなくなるということが、視聴者としてとても寂しい。

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花岡(岩田剛典)と寅子の会話。

「(花岡さんが裁判官になったら)盛大にお祝いしましょう」
「期待しちゃっていいんだね」
「ええ、もちろん!期待し

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虎に翼 第30話

虎に翼 第30話

直言(岡部たかし)がせっせと作る愛娘スクラップ、その冊子の隣に置かれた新聞記事の大見出しは「我軍 武漢陥落後も進撃の巨歩緩めず」。
……歴史的に見れば、日中戦争はこの武漢攻略戦で終結の糸口を見失った。「進撃の巨歩を緩め」なかったのではない、退くに退けない泥沼に突き進んだのだ。

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世相は暗い方向へ突き進んでいるが、高等試験に合格した、初の女性弁護士の一人となった寅子(伊藤

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