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宿直草

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江戸怪談集(上)収録の「宿直草」を現代語訳したものです。 私の独断と偏見により翻訳していますので、正しい語訳とは異なります。
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2015年2月の記事一覧

宿直草「三人しなじな勇(よう)ある事」

人里離れたある所に、化け物が棲みついた宮がありました。夜になれば人々は恐れて近くを通ることもせず、荒れ果てるままにされておりました。
ある時、宮の近くを三人の馬鹿者が通りかかり

「人々が怖がって近寄らぬ場所には、きっと何か面白い事があるはずだ。後々の話の種になるであろうから、これから見に行こうではないか」

と言いました。
似たもの同士でございましたので、血気盛んに、意気揚々と化け物の棲むという

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宿直草「甲州の辻堂に化け物のある事」

 元和五年の冬、三十歳ばかりの人が語るには

「私が幼い時分、とある修行僧が我が家にやってきて話をすることには『自分の生国は伊賀の甲賀でございます。若い時には近江出身の侍宅に奉公しておりました。
 その方は武田家中にお仕えしておられましたが、たびたびの戦により家運も尽き始めていると考え、密かに私をお呼び寄せになり

『重ねて戦になれば、もはや私の命もあるまい。その時には、せめて妻だけでも助けてやり

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