2社目の試練と楽しみ
そんなこんなで、人事の計らいで弱小セキュリティプロダクトの販売主幹部へ配属となった僕だが、社会人経験もほぼ皆無で、新人研修もきちんと終わっていない中、全てが手探りでの社会人生活が始まった。名刺の渡し方、お客様との接し方、色々なことを上司から学んでいった。しかし、上司は営業職で僕は技術なので、流石に技術的なところをカバーできない上司は、僕をメーカに出向させ、色々技術な部分を勉強することができた。この会社は自前のサポート部隊がいたのですが、僕の部門の販売製品の販売後のサポートはサポート部隊の正式取扱い商品ではなく、サポートも外注していた。その外注部隊は大阪に拠点があり、そこに出向して技術トレーニングやサポートノウハウを経験していきました。そこで僕の超お金持ちになって成功する友人に初めて出会ったのはある意味運命だったのかもしれない。
そんな感じであっという間に年月は経過するのだが、会社の方針で、セキュリティ製品を網羅的に扱う専門の部門を立ち上げると言う話が出てきた。この部門は今までのような単体製品を取り扱うのではなく、鉛筆からミサイルまでと言うような、商社的な製品ラインナップをゴールとしていた。ここで、ファイアウォールのデファクトスタンダードとなる製品を取り扱うようになったのだが、その製品主幹部門の技術担当が入社2年目の僕という、なんとも恐ろしい事態に。社内には1000人を超えるSEがいて、各SEはお客様のニーズに合わせて商品をお客様先へ納品実装するのだが、彼らがマニュアルでどうしようもないトラブルにあった場合、僕のところに問い合わせが上がると言うことだ。百戦錬磨のSE舞台から連日山のような問い合わせが入り、僕の帰宅時間は徐々に遅くなり、気がつけば月の平均残業が180時間を超えるようになってきました。(これなかなかブラックで時給計算で680円でした)当時国内シェアの60%を販売していたこともあり、僕への問い合わせや客先同行の案件は常に溢れ、結局日中はお客様対応で、製品検証や不具合の調査などはみんなが寝静まった午前0時を過ぎたところから始まった。朝の始発電車が動くまでに検証を終わらせ、その結果をメーカーにフィードバックし帰宅、シャワーを浴びて再び出勤こんな生活を月のお休みは1日か2日くらいで回していれば、流石に技術力は向上し知識レベルもその辺のエンジニアを遥かに凌駕するものとなっていった。
結局この頃頑張ったことによって、僕のエンジニアとしての基礎は出来上がり、隙のない検証と理論武装された問い合わせにより、メーカ内でも僕の評判は広がっていった。ある程度のレベルを超えると、全ての業務が楽になり、より自分の範囲を拡大し、コンサルティングやサポートインフラの構築など、本当に色々なことをするようになった。元々その会社の社長は目利きとして有名で、フラッとカルフォルニアへ行き面白そうな製品を持ち帰り、検証し製品ライナップに加えるというなかなかにアグレッシブなスタイルだったのですが、そこは僕も同じ感性だったためその社長のカリスマ性も合わせとても好きな人でした。しかし、大人の事情で社長から会長に移り最終的には会社を去ってしまった頃、僕の心にもこの会社でやることはもう終わったのではないかという気持ちが湧いてきた。その頃頻繁に新商品の売り込みに来ていた外資系のメーカがあったのだが、そこから転職のオファーがあり、話を進めようとしていた。しかし、製品の売り込みをしていたメーカ営業からするとその売り込み先の主幹部門の責任者である僕を引き抜いたのではビジネスに影響があると言うことで引き抜きの話はストップしてしまいました。しかし僕の転職意欲はますます大きくなり、合わせて自分の年収がほとんどアップしていないことに気がついた僕は、年収を上げるための転職を考えるようになりました。技術力を吸収することが楽しいのと、休日がほとんどなかったことからお金を使うこともなく、自分の給与に関しても全く頓着していなかったのはなんとも間抜けなのだが、若いうちにこれだけ技術力を磨くことに専念できる環境は本当にありがたいことで、数字だけを見ると完全なブラック企業だが優秀なエンジニアが生まれたことは評価されても良いかもしれない。自分で優秀と言うのもアレだが、国内シェア60%の商品のトップセールスを行いサポートも恐らく国内で最も数多くこなしていた僕は、国内で5本の指に入るといっても差し支えないと思うからです。人間、ここまで何かを極めると転職するにしても何をするにしても大黒柱のような確固たる自信を持てるようになる。僕の人生のスタートは波乱に満ちていたが、その中で培った技術力はそこから20年経っても心を後押ししてくた。
その頃僕の上司だった人が転職をする僕に残してくれた言葉は未だに覚えていて、「人には手は2つしかない。転職とは両手に持っている物の内どちらかを手放して新しい物を得ることだ。手放すものと新たに手に入れる物を天秤にかけて後悔のないようにしなさい」と言うことだった。これは転職に限らず人生の中で色々なタイミングで思い出される言葉となった。後に、2つある内の残すべき1つは人脈であると言うことが分かりました。人脈だけは金でも努力でも手に入れられないまさに運というべき要素が関わるもので、一度手に入れた人脈は大事にしなければならないし、人を大事にすることであらゆることが上手く行くというのがなんとなく理解できるようになった。
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