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君と食べるはずだった苺を一人で食べてしまった  

やってしまったと少し落ち込む  

最後に髭を剃ってからずいぶんと時間が経った  

これ以上はもう伸びない顎髭を左手で撫でながら苺を頬張る  

『苺ってなんだか赤くて粒々しててあまりにも綺麗だから食べたら死んじゃいそう』

『毒だったらどうしよう』

『苺と毒ってなんだか似てると思わない?』

そう言ったのは君だ  

スーパーで野菜売り場をふらつきながら
パックの苺を見て美味しそうと思った自分はなんだか歳をとったなと思う  

半袖より長袖が落ち着くようになってきた  

聞いていた音楽がいつのまにかあの頃というジャンルに区分されていく  

どこまでもどこまでも細分化されていく
脈絡のない毛細血管は根を張り、ビル群を目の前にした僕はめまいを覚える

『苺のビタミンCはヘタの方に多いんだって。
先端だと思っていたのになぁ』

『甘い方が好き、ヘタの方は酸っぱいから
先端だけたくさん食べたい』

君がそう言うからたくさん苺を買ってきた  

でも食べてしまった
テレビを見ながら次々食べてしまった  

苺を食べてしまった僕に
この悪魔めって
君は言うけれど

僕には君が美容の為にやっている
顔パックの方が
この悪魔めって感じだ  

次の日、苺を買ってきた君が
パックに悪霊退散と書いているのを見て  

こいつには勝てないな

そう思った  

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