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No.16 小林 透氏〜AIで水産養殖革新〜

小林 透氏 / スマート養殖技術(2022年11月発刊)

 日本の鉄道開業150周年にあたり、西九州新幹線開通の話題で持ちきりの九州長崎は話題の地域になっています。長崎は北海道に次ぐ海面漁獲量(漁業には海の漁、養殖、淡水魚の区別)の水産王国とのこと。NTT研究所ご出身の長崎大学小林先生が、水産養殖分野でご活躍とはいかに、ということでお話を伺いました。ご専門のインターネット情報技術をどの様に水産業に実装活用されているのか、興味津々です。

――ご出身はどちらでしょうか?

「1962年仙台市で生まれました、6つ上の兄がおりまして、幼少期は兄に“ひじられ”(仙台の方言でからかう、という意味)ながら、エレクトーンとプラモデルが大好きな子どもでした。でも音楽や機械に特別深い関心を持っていたわけではありませんが、大学進学の段階では機械工学分野でもまだ珍しかった産業用ロボットの研究室に進み、そこで情報工学に目覚めたのではないかと感じます。」

 「大学では当時まだ珍しかったデスクトップコンピュータのプログラミングでロボットを制御していたのですが、制御プログラムにはバグ(ミスやエラー)がつきものですから、期待した通りの動きができるかどうか、いつもワクワク〜ドキドキ〜そしてやっぱり、無音というか動かないロボットにガックシ、という日々をずっと送っていました。」

――卒業後は実業界へ進まれたのですね?

「NTTの研究所に勤めました。汎用コンピュータでのプログラム開発を担当したのですが、IT業界では当たり前なのでしょうね、昼夜を問わない結構ハードな勤務経験の思い出があります。50歳で次期進路の選択を迫られたので、大学へ異動を考えて、情報工学分野の道を選択しました。それ以降はインターネットを活用したシステム開発技術やWEBアプリ開発技術を専門にして、今も学生たちとも楽しく研究開発を続けていますよ。」

――研究成果をどのように活用されていますか?

「研究した結果を学会で発表することも重要ですが、私は社会への実装がより大事だと思ってきました。その意味では実学としての研究を心がけています。学生にも研究の目的や目標を正しく認識させ、それから方法論を考えれば良いと指導しています。今回のスマート養殖についての発表でも、長崎の水産関連企業さんと出会えたから、情報技術やAI(人工知能)を提案しながら実用化の成果となった訳です。」

「養殖事業はベテランの職人技で魚の様子を目で見て、肌で感じて育てている現場を観察しながら、データの活用を一緒に考え、システムとしてようやくまとめ上げたものです。」

「大学の研究成果こそ、企業にもっと利活用して欲しいと願っています。私の今の主流テーマはIoTとAIを融合させたシステム開発ですが、これこそ中小企業の成長の切り札になると信じています。」

研究室風景

――現在は単身赴任だそうですね?

「めったに帰らないので、休みのときにはこの地域の自然を堪能しています。ソロキャンプにハマりまして、長崎の美しさに溺れています!?」

ソロキャンプで読書

 長崎は、九十九島(実際には100以上の島々で構成)というような、たくさんの小さな島々がきらめいています。自ずと自然環境や水産業との関連は深く、西九州新幹線によってこれから一層注目を浴びる地域になることでしょう。小林先生の話されている研究成果を社会へ実装することが、長崎の観光や水産業の起爆剤となることが期待されます。

略歴:
2013年4月〜長崎大学大学院工学研究科情報工学コース教授
2011年4月〜法政大学 非常勤講師
2011年3月 電気通信大学大学院情報システム学研究科情報    
 システム基盤学専攻修了(社会人ドクター)
1987年4月〜2013年3月 日本電信電話㈱ NTTソフトウェア
 生産技術研究所、NTTソフトウェア研究所、NTT情報流通
 プラットフォーム研究所、NTTサービスエボリューション
 研究所を歴任
(1998年10月~2002年4月ドイツ、デュッセルドルフ駐在)
1987年3月  東北大学大学院工学研究科精密機械工学専攻修了
1985年3月 東北大学 工学部 機械工学科卒業

<取材日 2022/09/20>

主な著書:
2022年11月 スマート養殖技術 監修・執筆(エヌ・ティー・エス)
2021年1月 バイオミメティクス・エコミメティクス 共著(シーエムシー出版)
2019年2月 Lifestyle and Nature Integrating Nature Technology to Sustainable Lifestyles(Pan Stanford Publishing Pte. Ltd.)
2013年1月  HTML5によるマルチスクリーン型次世代Webサービス開発 共著(翔泳社)

スマート養殖技術/監修:小林 透(2022年発刊)

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