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ドラマチックはいらない、ロマンチックをくれ

私たちの間には、ドラマチックが足りないんだと思ってた。

目をまっすぐ見つめられ下の名を呼ばれた時も、肩を抱かれた時も、家に行きたいと言われた時も、キスされた時も、初めて一夜を過ごして眠れなかった時も、そんな夜を何度も繰り返しすやすや眠れるようになった今も、

私と彼の間には一定の距離がある。約4年近く、変わらない一定の距離が。

* * *

恋人にしてくれないの?と何度問いかけたことだろう。その度に彼はさあねと笑って流した。ああ、なんてことだろう。私の大切さに気付かないなんて。私にあなたが必要なように、あなたもきっともう私のこと手放せないよ。夢を語れるのも、愚痴を言えるのも、生きたいところに行こうと誘えるのも私だけだもんね?
けどまあ正確に言うと、私が手放せないだけなんだけど。彼は素直に私の手中にいてくれる。

大喧嘩して3ヶ月口きかない期間があっても(※私が勝手に怒っていただけ)また元に戻って、もう私たち磁石じゃん。それでも結局一定の距離。磁石は磁石でも、同じ極なのかな。

そんなこんなで、私たちの距離を近づけるためにはドラマチックが必要なんだと思ってた。私の転職や彼氏作ったごときでもぶれなかった彼だから、例えばどちらかが病気になるとか、事件に巻き込まれるとか、そんなドラマがない限り、もう命の危機に瀕さない限り動いてくれないのかもと思ってた。
病院のベッドで私の手を握って、「やっぱり大事なんだ」ぽろぽろ涙を流してほしい。私の大切さに気付くのが遅すぎるよ、と笑いながらも手を握り返したい。ああなんてドラマチックなんだろう。

けどさ、命の危機にさらされる恋なんてしんどくない?私長生きしたいんだけど。彼にも長生きしてほしい。というか、彼のいない世界のほうが怖くて生きていけない。いつだかそんな想像をしたことがあるけど、嫌すぎて考えるのをやめた。ドラマチックは美しいし、そんな映画やドラマも目にしてきたけど、自分に置き換えると無理。代償が大きすぎる。

だから、もう逆に関係性にこだわらないことにした。

ドラマチックなんていらない。

平々凡々でいい。

恋人関係、婚姻関係、全部いらないからその代わり、あなたも私もいつまでもいい距離感で付き合っていこう。寂しくなったら手を取るし、一人でいたい時は一人でいる。

そのかわり、ロマンチックを頂戴よ。

なじみの飲み屋で語り合う夜、終電どうすると探り合う瞳、背中向けないでよと言う甘えた声、絡ませた指の冷たさ、寝心地の悪い腕枕、覚めない身体に差し出されたホットコーヒー、あなたがくれる些細な”ロマンチック”でこれからも満たされたい。

贅沢を言うと、彼のベッドで朝目覚めたら薬指におもちゃの指輪がはめられていればいいのにな。型にはまらない私たちにぴったりな、がらくたの指輪。人生最大のロマンチック。

そんなことを夢見ながら、会えない君を今日も思い描いている。

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