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短編小説 結婚式

久しぶりに幼なじみから連絡が来た。
結婚式の招待状を送りたいから、住所を教えてほしいとの事。

彼女とは、物心ついたころからずっと一緒にいた。
保育園~中学まで同じだった。

田舎育ちの僕たちは、小学校、中学校とクラスもずっと一緒。
親同士も仲が良く、嫌というほど同じ時間を過ごした。

そんな彼女の結婚式。幼なじみが結婚。
自分も大人になったんだなぁと思う。
つい最近まで、学生だったのに。。。

ふと、そんな焦りを感じながらも、久しぶりに彼女と連絡を取った。
結婚式はいつで、どんな人で、出会いは・・・等々
あの頃と何にも変わっていない、元気で明るい声だった。

彼女と連絡を終え、私は一人で思い出に浸っていた。

保育園の遠足。
小学校の運動会
中学時代の体育祭・文化祭・修学旅行
中学時代、毎日僕のお弁当から好きなおかずを勝手にとる彼女
部活の最後の大会に応援しにきてくれていたこと。
メールで毎日やり取りしていたこと。
急に「LINE」が流行りだし、やり方をイチから教えてくれたこと。
義理チョコと言って、バレンタインにチョコをくれたこと。
「彼氏できた」と泣きながら彼女に報告され、人生最大の失恋をしたこと。
僕が高校受験に合格したとき、一番に喜んでくれたこと。
卒業式に一緒に泣きながら写真を撮ったこと。

僕の思い出には、いつも僕の青春にはずっと彼女がいた。

僕は自分の気持ちをずっと隠していた。
幼なじみの関係が壊れるのが怖くて
最後の一歩、自分の気持ちを伝えることができなった

修学旅行で告白しよう、体育祭で告白しよう、卒業式で告白しよう。
それでも、最後まで告白できないまま今に至る。

まるで、月9のドラマのようだ。
結婚式の会場に妖精は現れないだろうか...

なんて冗談を思いながら、私は結婚式に向かう。
「後悔はしていますか?」なんて記者にインタビューされたら
私は間違いなくこう答える。
「してないと言ったら嘘になります。というかめちゃくちゃしてます。」と。

それでも今日は、世界で一番大切な人が幸せになる瞬間だ。
盛大に祝福してあげたいと思う。
僕の青春を彩ってくれた幼なじみに心からの祝福を。

「結婚おめでとう!」

-了-





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