博士課程の社会人学生になりました
いきさつ
世の中には企業に就職してから修士や博士などの学位を取るために大学に戻ってくる人もいるわけですが,私もその一人になりました.
私はHuman Computer Interaction(情報系の一分野)の研究室で修士号を得たあと,働きはじめたサラリーマンで今年で就職してから5年になります.学生のときから研究という行為自体は好きだったのですが,論文を執筆するのが余り得意ではなかったのと,当時研究室にいた先輩たちがとても優秀だったので”自分はここまで研究に人生を捧げられないな”との思いから進学ではなく就職の道を選びました.就職した企業では研究開発部門に所属してはいますが,アカデミアのように論文を書いたりするのではなく新規事業・製品のためのプロトタイプ開発のようなお仕事を主にやっています.
正直なところ,卒業してからそこまで博士号を取りたいとは強く思ってはいませんでした.しかし昨年の年末に某所で行われていた一般の人に向けた大学の研究展示会で合成生物学の技術の工学的利用に関する展示に出会い,細胞やタンパク質といった生体部品を扱った研究をしてみたいと思うようになりました.そうなるとバイオ系の知識は皆無な上,実行には専門的な機材も必要となるため,一念発起して博士課程に挑戦する運びとなったのです.とはいえ情報系からバイオ系へと専門分野を変えるわけなのでそれなりに不安はありましたが...
受験時の状態
受験時の私の状態
- 社会人5年目
- 主な研究業績は国際学会でFull Paperが1本,Short Paper(Note)が2本
- 民間企業でのフルタイム勤務(裁量労働制)
私は企業で研究開発部門に所属していましたが,そこで論文を執筆する機会はなかったので研究業績としては学生時代からほとんど更新されていませんでした.加えて所属を希望する研究室の分野も変えたこともあり業績として十分かどうかはちょっと微妙なところだったと思います.
余談ですが企業での研究内容は,プレスリリースがされていないものに関しては基本的に詳細が話せないのでプレゼンテーション時に結構困りますね...
また,企業で働いている人が大学に戻る場合,大きく分けて以下の3パターンが考えられます.
社会人が学生になる場合
- 企業を退職(休職)して奨学金や学振,などから生活費を得て通学する
- 企業の大学への派遣制度を利用して給与をもらいながら通学する
- 企業で働きながら 余暇の時間を利用して通学する
私は生活の基盤が崩れるのは避けたかったのと今の会社と裁量労働制で契約していることもあり,働きながら余暇の時間を利用して通学することにしました.このあたりは会社の上司やチームメンバーが進学に理解を示して応援してくれたこと,会社と大学の研究室の物理的距離が近いことなどから必要に応じて平日の午前中などでも大学に通える恵まれた環境にあったことが非常に大きかったです.受験した学科で社会人として入学する場合は,事前申請をしておけば3年分の学費で最大6年まで通えるのも決め手の一つになりました.
テーマ決め
私が受験した学科の入試は基本的に,入学後の研究計画のプレゼンが合否を決める要素の大部分を占めます.研究室を訪問し受験を決めたのがだいたいGWのあたりだったので9月の試験までの代替3ヶ月ほどでテーマを決めて希望する研究室の先生から許可を貰わねばなりません.
卒業後の自分に関係のある分野の著名な学会の論文はチェックするようにはしていましたが,分野が情報系から生物学系に変わったのもあり研究テーマの立案は正直苦労しました.苦手ながらも自分の知ってる分野であれば英語の論文もなんとか読めていましたが,分野外となるといきなり論文を読んでも内容がさっぱり分かりませんでした.そこで自分の場合は
1.2,3冊日本語で書かれた比較的易しめの本を何冊か読む
2.日本語の論文を読んで面白そうだったら著者の他の論文も漁る
3.少し雰囲気がわかってきたら引用している英語の論文を読む
といった感じでなんとか勧めました.まずは研究テーマとしておもしろい絵を描けるかが重要なので最初のうちは学術書というよりはドキュメンタリーのようなものから触れてイメージを膨らませていき,最終的に3つほどテーマ案をもってそのうち1つでOKをもらいました.
社会人の場合,下手すると環境的に論文にアクセスできない場合も多いと思うので,このあたりの相談に乗ってくれるアカデミアの人を見つけておくのも重要だと思います.
その後,願書と一緒に研究計画書やその後の口頭試問に備えてプレゼン資料を作る必要があります.修士までは研究の結果を報告する機会に比べて計画を説明する機会が圧倒的に少なく,結果が出るかわからない研究に対してどのように説明すべきか結構迷ったのですが,学振の応募書類を公開してくださっている方たちの資料を見つけ,これがかなり助けになりました.
これから
そんなこんなで晴れて入試に合格することができ,また学生の身分となりました.入学のタイミングで職場環境に変化があったこともあり,職場と研究室の予定をダブルブッキングしないための調整など正直まだ軌道に乗っていない部分も多いですが,新鮮なことばかりですしまた研究を楽しんで行きたいです.
私の場合,入試に際に色々不安になることも多く情報収集に時間を使いすぎてしまった部分もあったので,この記事が今後進学を考えている方の助けに少しでもなればいいなと思います.noteの方も文章を書く練習も兼ねて無理のない程度に更新していきたいです.
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